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鉄道まるっと切り抜き帳

70年前の震災乗り越える 福井鉄道「モハ161−2」

親子らにレトロな雰囲気の電車内を案内する伊藤さん(左から3人目)=福井市の下馬中央公園で

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 木製の床。天井の扇風機。バネの入った少し硬めのシート。下馬中央公園(福井市下馬3)に置かれた、レトロな雰囲気が漂う電車内に23日、大勢の人が集まっていた。年1回の公開に向け準備を進めてきた鉄道愛好家の伊藤晃嗣さん(27)が、運転席やシートに座って楽しむ子どもたちに語りかけた。「この電車は震災を乗り越えたんだよ」

 電車は、かつて福井鉄道を走っていた「モハ161−2」という。1948年6月28日、福井地震が発生した時、福井駅西側で被災した。火災に見舞われ、車体部分を焼失。ただ、台車部分は無事だったため修理され、その後も市民の足として活躍した。97年に引退。「震災電車」のラストランは鉄道ファンの反響を呼び、2日間の「アンコール運転」まで行われた。

 その後、福井市が福井鉄道から譲り受け、同公園に展示されることになった。ただ、それ以降、管理が行き届いていたとは言えない。4年ほど前には、小石などで車体を傷つけられたり、投石で窓ガラスが割られたりすることもあった。立ち上がったのが、伊藤さんたち鉄道愛好家のグループだった。

 福井市出身の公務員である伊藤さんは幼い頃から、震災電車の存在を知っていた。年々傷みが激しくなる電車に、心を痛めていた。2014年に車体の修復をした市から、鉄道ファンとして知られていた伊藤さんに「この電車を使って何かできないか」と打診があり、「自分のような若い世代が受け継ぐことで、半世紀は管理できる」と快諾した。15年から、福井地震が発生した日の数日前に1日だけ、電車内部を公開している。17年には、伊藤さんを代表とする「福井鉄道161保存会」をつくった。

 この電車に関わるようになってから、地震についてより詳しく調べるようになった。全国的に見ても、震災を乗り越えた電車が保存されているのは珍しいことも知った。公開イベントには、鉄道ファンだけではなく福井地震を体験した人も訪れ、「この電車で通勤していた」などと往時の記憶を語ってくれた。

 公開の3日前、1人で入念に電車内を清掃する伊藤さんの姿があった。今、電車を保存する意義はより大きくなっていると感じている。「福井地震を伝える震災遺構は少ない。自分たちの世代でも、周囲で福井地震の話を聞く機会はあまりなかった。伝えなければ、風化してしまう」。「震災電車」が少しでも子どもたちの心に残ってくれたなら。そのことが福井地震を伝えることにもつながると考えている。 

  (小川祥)

 

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