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鉄道まるっと切り抜き帳

石炭の香りの中、眼下に三河湾 愛知こどもの国のSL

子どもたちを乗せて、新緑の中を疾走するSL=西尾市の愛知こどもの国で

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SLの運転体験をする記者=昨年12月、西尾市の愛知こどもの国で

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 久しぶりに窓が開く列車に乗った。心地よい風が吹き抜け、笛の合図と「フォー」という汽笛が小さな旅へ誘う。急な勾配を懸命に登る。線路との摩擦できしむ音や石炭の香りを楽しんでいると、眼下に三河湾が広がった。

 愛知こどもの国(西尾市東幡豆町)の丘の中腹を1周する「こども汽車」。5両の客車を引っ張る「B12」は、長さ4・86メートルと小型ながら、全国でも珍しい石炭で走る現役の蒸気機関車(SL)。44年前の誕生から子どもの心をつかんできた。

 原理は「D51」「C62」などと同じ。ギアを前へ押し、汽笛を鳴らして出発進行。アクセル(加減弁)を少しずつ引くと進む。「1ミリずつというイメージで」と運転担当の永井義弘さん(60)。少しでも引きすぎると、空転して立ち往生する。それを防ぐために砂をまくことも。相棒の機関助士は石炭を補充してボイラーを10気圧ほどに保つ。

 具体的に示したのには訳が。記者は昨年12月、西尾市の「ふるさと納税」の返礼で運転を体験させてもらったのだ。永井さんの指導で微妙な運転操作で走り方が変わるSLの繊細さに触れた。生き物に例えられるのを実感し「汽車ぽっぽを運転したい」という幼い頃の夢を実現させた。

 この地で走り続けてきたSLだが、国や県などの文化財や産業遺産として認定されていない。営業路線で走った実績、人に例えれば“社会人経験”がないから。だがもう1人の運転士の神谷仁さん(63)は言う。「ただの公園の遊具ではない。歴史的、文化的な価値を感じてほしい」と。電車に新幹線、リニアモーターカーと進歩しても、その技術の礎となったSLを大切にする気持ちは持ち続けたい。  

 文 ・村瀬 力 

 写真・鵜飼一徳

 こども汽車 SLは「B12」と「B11」の2機で1974年、福島県の協三工業で新造された。一時期故障したB12はクラウドファンディングによる資金調達で1年半前に復活。線路幅762ミリのナローゲージで1135メートルを7分で1周する。土日曜日、祝日におおむね20分ごとに運行し、1乗車300円。

 

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