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鉄道まるっと切り抜き帳

松阪駅で120年以上駅弁販売 新竹商店4代目社長の新竹浩子さん

写真

 県内唯一の駅弁会社で、1895(明治28)年から松阪駅で駅弁の販売を続けている新竹商店。鉄道ファンに知られた名だ。切り盛りするのは4代目社長の新竹浩子さん=写真。コンビニエンスストアや駅ナカと呼ばれる売店の増加、車内販売の廃止と、逆風の中でも走り続けている。新竹さんに駅弁への思いや展望を聞いた。 

 −松阪駅開業2年後から営業している。長く続いている秘訣(ひけつ)は

 米は県内産で牛肉は地元専門店から仕入れるなど、素材選びに妥協せず、昔ながらの作り方を貫いています。

 今は来年60周年を迎える看板メニュー「元祖特撰(とくせん)牛肉弁当」やメロディーの鳴る「モー太郎弁当」など17種の駅弁を作って、松阪駅や近くの店舗で売っている。工程は手作業で、米を炊くときは従業員が気温に応じて水の量を調節する。効率的ではないけれど、そこはぶれません。

 コンビニ弁当は新しい味が求められる。駅弁は懐かしさを感じられ、変わらない味が大切。旅行した土地土地の景色や家族と過ごした時間といった思い出と一緒に記憶される。古くからの味を守ることが、駅弁の歩むべき道だと思う。

 −客との印象深いやりとりは

 「病気の父が『死ぬ前にもう1度食べたい』と言っている」と、名古屋から買いに来てくれた人がいた。プロポーズの時に土産として渡された経験から、結婚記念日は牛肉弁当という女性もいる。人生の節目を彩っていると思うと、感慨深い。

 −弁当1個でも駅のホームにスタッフが出向き、短い停車時間に手渡している。昔よく見られた、売り子が列車の窓越しで売るスタイルを思い起こす

 ファンあってこその駅弁。当たり前のことと思っているが、「良いサービス」と喜んでもらえる。電車がホームから去るまで頭を下げ、お客さんにも車掌さんにも、感謝を伝えるように心掛けている。

 −百貨店の駅弁大会など集客力のあるイベントは多い

 宣伝効果は大きい。ただ、松阪に来て食べてもらいたいのが本音。作り置きせず、なくなれば作るジャストインタイムで、作りたてを提供できるので。

 −ホームページやフェイスブックでの情報発信にも積極的

 会員制交流サイト(SNS)は拡散力がある。自分が投稿するだけで駅弁友の会の人が広げてくれる。イベントで駅弁を出すときは、SNSで告知したり、当日に会場を訪れた人と写真を撮ったりして、輪を広げている。

 −今後の展望は

 各地の名産品がつまっている駅弁は、長い年月をかけて沿線に根付いた地方の文化。鉄道や旅の思い出を長きにわたって共有できる特別の価値があると思う。「守りこそ攻め」という気持ちで、鉄道の歴史と文化を守る駅弁を作り続けたいです。

(古檜山祥伍)

 あらたけ・ひろこ 松阪市出身。明治大卒業後、東京で舞台女優として活躍。「きれいで芝居が上手な人は他にいるけど、駅弁屋の娘はそうはいない」と27歳で松阪に戻り、家業に入った。2008年に社長に就任した。従業員約30人で、駅弁を年間2万食ほど製造販売し、年商は3・8億円。全国の駅弁業者でつくる日本鉄道構内営業中央会によると、駅弁の販売量は1970年の1日25万食をピークに減少。当時430社あった加盟業者は昨年10月時点で95社になった。

 

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