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鉄道まるっと切り抜き帳

京阪電鉄「800系」登場20年 路面、登山、地下鉄と1台3役

上栄町駅から大きくカーブし、路面電車区間に入る京阪京津線の800系電車=大津市で

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急勾配を登る800系電車。6.1%の勾配は全国有数だ=大津市で

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御陵駅から西は、京都市営地下鉄東西線へ乗り入れる=京都市山科区で

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 大津市と京都市を結ぶ京阪電鉄京津(けいしん)線の車両「800系」の登場20年を記念したスタンプラリーが今月末まで行われている。駅など4カ所のスタンプを集めるともらえる景品(キーホルダー)が品切れになり、追加発注をかけたほどの盛況ぶりだ。鉄道ファンから熱い視線を浴びる車両の人気の秘密を探った。 

 「こんな長い編成が自動車と並んで走るのは、全国でもここだけですよ」。ある日の昼下がり、大津市の浜大津駅前でカメラを構えていた大阪府茨木市の会社員寺井敬士さん(50)は声を弾ませた。狙うは、交差点で800系が車体を大きくくねらせる構図だ。

 路面電車は車両を連結した長さ(車体長)の上限は30メートルだが、国から特別許可を受けた800系は4両編成で66メートルにもなる。路面電車だが、路面電車らしからぬところが人気らしい。

 しかも800系は、浜大津駅を路面電車として出発した後、次の上栄町駅からは急勾配が続く登山電車となる。さらに御陵駅からは地下鉄に直通して京都都心を貫く。路面電車と登山電車、地下鉄という「1人3役」をこなす器用なところも人気の理由だ。

 このため床下には機器が隙間なくぎっしり。暗いトンネルを走るために2種類の安全装置を搭載し、自動運転もできるハイテク車両だ。屋根上のパンタグラフ(集電器)も、コンパクトに折れ曲がる仕様だ。大津営業部技術課の中島利明さん(57)は「単価が日本一高い車両とも言われます」と教えてくれた。

 安全のための細かな配慮も。夜に自動車からよく見えるよう、側面に計24個の車幅灯が光る。勾配対策で、始発電車に乗る職員は車輪の空転に備えて「滑り止めの砂」を携行する。カーブを曲がる時のきしみ音を抑えるため、レール脇には散水器がある。京津線ならではの風景がファンの目を楽しませる。

 京津線に石山坂本線を加えた大津市内の京阪2路線は一時、同社から分離が検討されるなど、単独での採算は厳しい状態だ。京津線の場合は地下鉄との競合で利用者が激減した駅があったためだが、この10年で乗客数も少し回復。800系も昨年から塗装を順に塗り替え、観光客を呼び込もうとしている。

 「20年前と景色は変わったが、お客さまを運ぶ心は変わりません」と、広報担当の中西一浩さんは話す。京津線で主演を続ける800系を、鉄道マンとファンたちの愛情が支える。

(野瀬井寛)

 京阪京津線 浜大津−御陵(京都市山科区)を旧東海道に沿って結ぶ7・5キロの軌道線。1912年に大部分が開通。97年、地下鉄東西線の開業に伴い、並行する御陵−京津三条(現在の三条京阪駅付近)の路面電車区間を廃止し、地下鉄に直通を始めた。戦前の一時期には京阪本線への直通電車もあった。

 

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