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鉄道まるっと切り抜き帳

左手は動く!「撮り鉄」再び 写真家井上さん 名古屋で展示

自身の写真作品の隣に立つ、井上さん(左)と加藤さん=名古屋市瑞穂区の「野菜カフェ・オンフルール」で

写真

 事故で右手が動かなくなった写真家井上嘉代子さん(50)=岐阜市=が左手だけで写真を撮り続けている。一度は手放したカメラを、息子の後押しで再スタートした。友人で写真家の加藤千香さん(44)=名古屋市南区=と、名古屋市瑞穂区鍵田町の喫茶店「野菜カフェ・オンフルール」で写真展を開催している。(竹谷直子)

 こいのぼりが風にゆられる中や、ライトアップされた東京スカイツリーの近くを電車が走る。写真展「鉄・彩・展、ナイトアンドデイ」では、朝から夕暮れ、夜に至るまでの風景を走る鉄道写真20点を展示している。

 井上さんが写真を始めたのは、小学生のころ。弟が夜にぜんそくの症状が出ると、父が岐阜駅近くの踏切で電車を見に連れて行った。真っ暗な中、踏切の明かりで光る車体の美しさに引かれ、写真好きの父と一緒にカメラを始めた。

 社会人になり、インテリア会社の広告部門や商品のパッケージデザインなどの写真を撮る仕事を続けた。しかし8年前、バイク事故で右手の神経がまひした。仕事を辞めざるを得ず、「家事も十分にできない。自分は必要ないのではないか」と気力を失い、引きこもる日々が続いた。

 転機は5年前の母の日。自宅のテーブルに一眼レフのカメラが入った箱があった。「やるよ」。普段は無口な次男が就職し、2カ月分の給料で買ってくれた。「子どもが心配してくれている。もう一度外に出なければ」と背中を押された。

 左手のみの撮影は困難が続いた。手をねじるように構えて撮ると、ピントが合わない。三脚にもカメラを設置できず何度も落とした。悩んでいた時、交通事故で下半身不随になった車いすの男性が、手こぎ自転車で岐阜県内縦断を目指す新聞記事を見た。「自分も頑張らなくては」と勇気づけられた。

 北海道から鹿児島まで鉄道を追い掛け、車内に冷蔵庫や布団を常備。寝泊まりして撮影をすることもある。自分と同じ障害者のアート作品を撮影するなど、鉄道以外でも活動している。「写真が今の生きがいです」

 今回の写真展は、加藤さんや写真仲間の協力で実現した。片手で作業が進まないこともあったが、「加藤さんに『大丈夫だよ』と言ってもらえると心が安らいだ」と話す。「私が活動を続けることで、私がもらったようにたくさんの方に勇気を与えられれば」。展覧会は22日まで。

 

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