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鉄道まるっと切り抜き帳

豪華列車ブーム完全無視「そんなの関係ねえ」 独自路線のJR東海「輸送重視」

豪華寝台列車「四季島」のラウンジ=3月、JR上野駅で

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1車両に1室を充てた「瑞風」の最上級客室「ザ・スイート」の寝室=2月、大阪市で

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 全国のJR各社が豪華寝台列車を次々と導入し、客室のひのき風呂や一流シェフが振る舞うコース料理など、個性あるサービスが大きな話題を呼んでいる。そんな中、鉄道業界で純利益トップのJR東海は、豪華寝台列車について「全く検討していない」(柘植康英社長)と独自の路線を貫いている。飛騨高山や伊勢志摩など国内外に人気の観光地を管内に抱えているのに、どうしてなのか。

◆そもそも…周遊不向きな路線網

 5月1日にデビューしたJR東日本の「トランスイート四季島」と、6月17日から運行を始めたJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」。四季島は3泊4日の旅行で1人当たり74万〜95万円、瑞風は1泊2日から2泊3日で27万〜120万円。それぞれ超高額ながら、申し込みが殺到し、どちらも1年先まで予約が取れないという。

 先駆けとなったJR九州の「ななつ星in九州」は、10月で運行開始から4年になるが、直近の申し込み倍率は平均17倍の人気ぶり。外国人富裕層の関心も高い。熊本地震や豪雨が相次いだ九州地方で観光復興の象徴にもなっている。

■「魚の骨」型

 ブームになりつつある豪華寝台列車だが、JR東海は静観している。柘植社長は6月の定例会見で「当社のビジネスの中心は東京、名古屋、大阪間の大動脈輸送だ。豪華列車は考えていない」と述べ、他社と一線を画す立場を強調した。

 背景には「フィッシュボーン(魚の骨)型」と呼ばれる路線網がある。東海道新幹線という「背骨」に向かい、中部地方の各地から「細い骨」のように在来線が伸びる形をしているからだ。このため、他社のように路線を周遊して観光地を巡るルートの設定がそもそも難しいという。

 鉄道経営の基本姿勢の違いもありそうだ。新幹線の食堂車の廃止など、民営化後に徹底した合理化を進めてきた葛西敬之名誉会長は今年3月、豪華寝台列車について「鉄道はあくまで交通手段。鉄道に乗ること自体を目的にする人たちのために、鉄道を整備することはない」と語っていた。

■期待の声も

 JR東日本などが開発した北陸新幹線の車両は漆塗りの内装などを施し、外国人観光客を意識するのに対し、東京五輪が開かれる2020年にお目見えする東海道新幹線の新車両がシンプルな内装なのも、手堅い姿勢の表れと取れる。

 名古屋市内の観光関係者は「今後もJR東海が豪華列車を走らせるとは考えづらい」との見方を示しつつ「地域の観光を活性化するためにも、話題を呼ぶ列車を走らせてほしい」と期待する。

 JR東海も、在来線の既存車両を使った観光列車は走らせていて、来年秋には愛知県内を周遊する列車を新たに運行する方針だ。

 いずれにしても、鉄道に乗って楽しむ旅行スタイルは確実に増えつつある。鉄道評論家の川島令三さんは「一部の富裕層しか楽しめない豪華列車にこだわる必要はないが、JR西など他社と広域的に協力した上で、人気の観光地を巡れるような周遊型の寝台列車を検討しても良いのでは」と提言している。

 (石原猛)

 

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