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鉄道まるっと切り抜き帳

佐久間ダム建設時に大役 全通80周年の飯田線

全線開通80周年を迎える飯田線。かつては佐久間ダム建設の大プロジェクトを支えた=新城市有海の鳥居駅で

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 「南極観測」「茨城県東海村の原子炉」「佐久間ダム」。昭和20年代末から30年代初めにかけて、3つの国家的プロジェクトが子どもたちの夢をかきたてた。日本もいよいよ先進国と肩を並べる−。そんな予感があった。

 私が生まれ育った集落(新城市有海(あるみ))を、飯田線が走っていた。鳥居駅の木柵にもたれ、電車を眺めるのが好きだった。

 見慣れない機械を満載した貨物列車が連日、通過して行く。「佐久間ダムの建設に使う米国製の機械だ。狭いトンネルを通れるよう、分解して載せてある」。駅員さんが、そう教えてくれた。

 敗戦後わずか十数年。外国の助けを借りつつも、日本は東洋一といわれた佐久間ダムを完成させた。道路事情が劣悪だったこの時代、飯田線は懸命に大役を果たしたのだ。

 子ども心に高揚感を味わいつつも、線路脇に目をやれば列車のトイレの“落とし物”が点々と連なっていた。日本は、まだまだ貧しかったのである。

 あれから半世紀以上たった。茶色の旧型国電はスマートな新造車両に更新されたが、利用者の激減が気にかかる。

 奥三河の中心、新城駅の1993年度の乗降客は1日平均3894人だった。2016年度には1354人に落ち込んでいる。

 山岳地帯の難工事を克服し、全線開通から今年で80年。2本のレールは追憶へとつながる。だが、未来はなかなか思い描けない。

 文と写真・鈴木泰彦

 飯田線 豊橋駅(豊橋市)と辰野駅(長野県辰野町)を結ぶ総延長195・7キロ、駅数94の単線鉄道。前身は豊川鉄道、鳳来寺鉄道、三信鉄道、伊那電気鉄道の4つの私鉄路線で、1937(昭和12)年8月に全線開通した。43年の戦時国有化を経て、87年からJR東海が運行している。中央構造線が形成した険しい峡谷を通っているため自然災害が多発し、今年も4月18日から27日まで、三河川合−中部天竜間が土砂崩れで不通になった。

 

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