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鉄道まるっと切り抜き帳

自然と共存、山の命綱 比叡山「坂本ケーブル」

しんしんと雪が降る中、比叡山の急坂をゆっくりと登るケーブルカー=大津市で

写真

 ジリリ、ジリリ…。ベルの音を合図に、屋根にうっすらと雪をかぶった車両が、霧にかすむ木立の中へ分け入っていく。

 比叡山のケーブルカー2路線のうち、冬季は大津市が起点の「坂本ケーブル」だけが運転する。冬季と嵐の夜は、山上側の延暦寺駅に係員が宿直し、道が閉鎖されても、山と麓を結ぶ「命綱」を守る。

 「不安で眠れない日も」。運輸部長の杉江健さん(64)は振り返る。嵐が明けた朝、線路を点検すると、スギやヒノキが電柱をなぎ倒しているのを見て目を覆った。山の自然は厳しい。

 運休を減らそうと思案を重ねて気付いた。「頑丈な設備を造るから被害を受ける」。架線と電柱を撤去して車内照明を最小限にし、客室内に大型トラック用のバッテリーを積んだ。発想の転換で運休は激減。思いがけず、電柱が消えて、車窓にはますます迫力ある琵琶湖の眺めが開けた。

 駅員は今日も、白い息を吐きながら深々と頭を下げ乗客を見送る。感謝の印は安全運行への祈りを山の自然に捧(ささ)げるように見えた。

 写真・榎戸直紀

  文・野瀬井寛

 

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