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全国学力テスト10年(5)国際調査の影響 (大津支局・浅井弘美)

2015年のPISAで日本の正答率が悪かった科学の問題の回答例(国立教育政策研究所のホームページから)※設問文は簡略化

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 自治体の間で激しさを増す不毛な競争。文部科学省は事態をどう考えるのか。学力調査室の高木秀人室長(44)に聞いてみた。

 −沖縄の中学校で成績が下位の子どもを省くなどの事例があった。他県でも起きている。現場の先生たちから聞いています。

 「県教委に電話で問い合わせたが『ありません』という返答で『本当か』と聞いて、それを何往復かしたけど、出てこない。ないんじゃないかと思っている」

 −過去問を集中的にやるなど、平均点を上げる対策がエスカレートしています。

 「そんな対策はおかしい、と昨年四月に大臣も発言し、通知も出し、そんなことやっているなら耳に入れて、と記者会見で言っているけど、裏が取れるような情報は入っていないんですよ」

 −調べないのですか?

 「調べますよ。突然行くと、不審者になるので『何日に行きますんで』と事前に連絡してからですけどね」

◆「競争のため」否定

 −現場の先生たちは競争に追い込まれて大変です。

 「競争するためのものでもなんでもない。競争しなくていい」

 −原因は、文科省が公表する都道府県別の平均正答率の一覧。なぜ公表するのですか。

 「国としての説明責任です。毎年、約六十億円弱使うので。都道府県ごとの傾向はこんな感じです、と」

 地域を比較するデータを無造作に出しながら、不毛な競争を防ぐ手立ては何も講じない。むしろ、無責任な印象を受けた。批判を意に介さないのは、経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)の結果に意を強くしているからだ。

 「昨年末に二〇一五年の結果が出たが、科学、数学で、わが国はトップレベル。十年続けてきて、学力テストは非常に効果があったと思う」

 OECD加盟国を中心に七十二カ国・地域の十五歳が参加するPISAは三年ごとに、読解力、数学的応用力、科学的応用力の三分野を調べる。どんなテストか、分かりやすい例がある。日本の正答率が8%にとどまった科学の設問は「養殖用の三つの水槽にシタビラメ、えさのゴカイ、貝、海草をどう配置するか」という内容だった。

 正答率が低かったのは、理科の教科書にない見慣れない設問だったからか、コンピューターでのドラッグ&ドロップに不慣れだったのか。そもそもこの問題が解けないことが、それほど深刻なことなのか。そんな議論は置き去りだ。文科省は、学テでは「平均点を上げる対策には意味がない」と繰り返しながら、その実、文科省こそがPISAの「数値」に一喜一憂し、学テの内容をますますPISA対策化させている。

 実は、そのPISAに対しても、国際的な反発が高まっている。一四年には、英紙ガーディアンに欧米の大学教授ら九十人が中止を求めるメッセージが掲載された。

◆教育ゆがめる恐れ

 「われわれはPISAのランキングの悪影響を、率直に心配している」とあり「(順位が落ちた国で)PISAショックが宣言され、ランキングを上げるために教育制度を変え、(独自の)教育慣行に深く影響を与えている」と警鐘を鳴らす。

 数学、科学、読解力に限定された調査に「数値化しやすい分野を強調し、測定しにくい道徳や芸術などに目を向けにくくさせている」と批判。さらに、経済分野の国際機関であるOECDには「教育改善の任務はない」と断じ、「就職の準備をさせることが、公教育の唯一の目的ではない」と訴え、こう喝破する。

 「OECDは各国でPISA対策のサービスを提供する多国籍企業と提携した。事業の赤字を穴埋めし、利益を上げるためだ」

 学テを巡って各地の自治体が不毛な競争を繰り広げ、教育現場を混乱させているこの国の実態が世界中で起きているかのようにも読める。

 池田賢市中央大教授(教育学)はPISAについて「そもそもOECDの目的は、経済に役立つ人材の開発。どの国民が使える人材かを見ている」と文科省が“学力”と直結させることに懐疑的だ。

 PISAをお手本にする学テを、このまま推し進めてよいのだろうか。

 「競争するためのものじゃないんです」。文科省が丁寧な言葉で語るほど、建前で言っているだけに聞こえて仕方がない。

 (中日ウェブ・プラスに掲載、12日に番外編)

 

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