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大阪が熱い!アジアの観光客急増 豊田直也(大阪支社報道部)

◆味と人情が人気の秘密

多くの外国人観光客でにぎわう黒門市場商店街=大阪市中央区で

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 大阪を訪れる訪日客が急増している。二〇一四年の三百七十六万人から、一五年は七百十六万人に倍増。今年は一千万人に迫る勢いだ。訪日客の七割以上を占める中国、韓国、台湾、香港の東アジア四カ国・地域からの訪問数では今年、東京を抜いて全国最多になった。なぜ人気なのか。

◆見どころ少ない

 不思議なのは、旅の口コミサイト「トリップアドバイザー」がまとめる外国人に人気の観光地に、実は大阪の観光地は三十位以内に一つも入っていないこと。上位には、赤い鳥居が連なる京都の伏見稲荷大社、広島の原爆ドーム、厳島神社、奈良の東大寺…。見どころがないのに集客力は抜群。スター不在の“一丸野球”で優勝するプロ野球チームのような感じだ。

 外国人観光客でにぎわう大阪の街を訪ねてみた。まずは「浪速の台所」。鮮魚店を中心に約百五十店舗が軒を連ねる大阪市中央区の黒門市場商店街だ。「いらっしゃーい」。威勢の良い声を響かせながら、精肉店は店先の鉄板で神戸牛の串を、鮮魚店はホタテやウニを焼く。

 平日ということもあってか、通りに群がる客のざっと八〜九割がアジアの観光客だ。商店街というより、食べ歩きを楽しめる屋台街のようだ。この商店街はもともと料理店が食材を仕入れに来ることが多かったが、三年前から外国人観光客が急増した。それに合わせ、生の魚や肉を売るだけだった店の多くが、観光客向けに食材を調理して出すようになったという。

 フグの卸売り・小売店「みな美」もその一つ。店先のテーブルでは、中国人カップルが熱々のふぐ鍋を食べていた。

 「三年前、水槽で生きてるフグを見て、中国系の人が刺し身にしてくれって言うてね。さばいてやるんやけど、アラはいらんって。それはかわいそうやから、アラを鍋にして出してあげたんやわ」と秦一男社長(62)。それ以来、テーブルを出し、客が買ったフグをてっさと鍋に調理して提供するように。今や香港や台湾のガイドブックでも紹介され、平日の客の七割を外国人が占めるという。

 大阪人気の理由を、秦社長は「やっぱ庶民的やからちゃう? 外国人だろうと日本人だろうと、気さくに『何食べる?』って聞くしな。大阪、食べるとこ多くて、アジアの人、食べるの好きやし」と話す。

 どの店も中国語や英語の商品表示が充実している。持ち帰り専用の天ぷら店「日進堂」では、マレーシア人の家族がエビやイカの絵を指さして注文していた。おかみの赤松幸子さん(68)は、気さくに人さし指を立てて「ワン(一つ)? フライ・アゲイン(揚げ直し)する?」。日本語と英語がごちゃ混ぜだが、問題なく伝わっているようだ。

 商店街の休憩所で休んでいたインドネシア人のユスニタさん(26)は「大阪はシーフードがおいしくて、いろんなものが食べられる。人もフレンドリーでいい」。中国、シンガポール、マレーシア、米国の観光客にも大阪を訪れた理由を聞いたが、おいしい食事やインターネット上での評判を挙げる人が多かった。

 試しに英語のウェブサイトをのぞくと、「天下の台所」や「美食家の天国」と紹介され、気さくな大阪人気質を魅力に挙げているところもあった。

 大阪の特徴は、東アジアからのリピーターが多いことだ。

◆格安航空が後押し

 大阪観光局が関西空港(関空)で行った調査では、35%が大阪を複数回訪れた経験があった。その理由として、韓国の旅行会社から十月に大阪観光局に転職したキム・ミンチョンさん(35)は「関空に格安航空会社(LCC)が多いので、韓国人にとっては国内旅行の感覚。道頓堀で街の雰囲気や買い物を楽しめて、食べ物もおいしい。街がコンパクトで、京都や奈良も近いので、短期間でも楽しい」と手軽さを挙げる。

 関空では、LCCの夏季の国際線便数は、一一年の週四十三便から、今年は週三百七十一便と九倍近くに伸びている。関西以外では知名度が低いものの、新緑や紅葉といった四季の変化を楽しめる景勝地「箕面の滝」や、江戸から昭和の大阪の暮らしを紹介する「大阪くらしの今昔館」も外国人の人気を集めている。今昔館は、着物の着付け体験を紹介した韓国人のSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)への投稿がきっかけになったという。

 もちろん関空や神社仏閣が多い京都、奈良に近い恩恵があるのは間違いない。それに加え、飾り気がない「大阪の街」のありのままの姿と、需要を取り込むちょっとした工夫が、「観光名所」というスター不在でも海外の訪問客をひきつける魅力につながっているのではないか。

 「ニュースを問う」へのご意見は、〒460 8511 中日新聞編集局「ニュースを問う」係へ。電子メールは、genron@chunichi.co.jp

 

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