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みえびとの肖像

第5回 岩崎筧一(88) 火縄職人

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◆伝統の火 消すものか

素早い手つきで竹を薄く削る。火縄づくりで最も難しい作業=名張市上小波田で

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 「シュッ、シュッ」とリズミカルな音が作業小屋に響く。竹の表面で鎌を滑らせると、竹の皮がかんなくずのように薄く削り取られていく。それを、手際よく麻縄のように編み込んでいく。

 火種を持ち歩くための火縄は、火おこしが困難だった時代に重宝された。煮炊きだけでなく、火縄銃や忍者の連絡手段ののろしにも使われたという。

 先祖代々、家業として受け継いできた。「上小波田地区の火縄は火が消えにくいと評判だった」。でも、若いときは跡継ぎになろうと思わなかった。ようやく決心したのは還暦のとき。かつて地区に約二十軒あった火縄作り農家は姿を消していき、三年前、国内で唯一の火縄職人となった。

 今は後継者探しで自身の活動の発信に力を入れる。「伝統を絶やさないため、責任感だけで仕事してますわあ」。この心意気が、火縄作りの文化を支える。

完成した火縄。火縄を使う祭りが開かれる京都市の八坂神社が主な出荷先という=名張市上小波田で

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写真・文 大橋脩人

 <いわさき・けんいち> 名張市上小波田在住。中学を卒業後、徴兵や農家、ゴルフ場勤務を経て、60歳のときに父親から火縄作りを継いだ。日課は田んぼの見回り。

 

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