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メメント・モリ

第3部「遺品の行方」 (2)整理代行

遺族の男性と相談しながら遺品を整理する作業員(左)=東京都調布市で

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 線香がたかれた和室で、段ボール箱に生活用品や衣類が詰め込まれてゆく。東京都調布市の住宅街、バス通りから一本入った築五十年の木造民家。道路脇に止めた二トントラックに段ボール箱を運び込む作業員は、故人の生前の持ち物を遺族に代わって片付ける遺品整理業「プログレス」(京都市)の社員だ。

 この家に住んでいた女性は昨年一月、七十四歳で病死した。夫と二人の息子に先立たれ、五年近く独りで暮らしていた。五人いた女性のきょうだいは四人が既に亡くなっており、女性の家は兄(82)が相続した。その長男で、神奈川県内で暮らす会社員の男性(54)が、業者に整理を依頼した。

 男性は海外生活が長かったこともあり、女性の家族とは手紙のやりとり程度のつきあいだった。亡くなる二カ月前、「足が痛い」と歩くのを嫌がった女性を、病院までおぶって連れて行ったのが最後になった。「離れて暮らしているので、妻と二人で遺品を片付けるのは大変だと思った」。依頼先の業者はインターネットで見つけた。

 核家族化にとどまらず、無縁化がキーワードになった現代。遺品の整理代行を手掛ける業者は急増し、二〇一一年に設立された遺品整理士認定協会(北海道千歳市)の会員企業は約八千社に上る。小根(こね)英人副理事長(40)は「それでも業界全体の半数にも届いていない」。需要の高まりで、清掃業や廃棄物処理業からの新規参入が相次いでいるという。

 依頼主の男性が見守る中、女性宅の整理が進んでゆく。衣装だんすの奥にしまわれていたビニール製のバッグやキルティングのティッシュケース、ネクタイ、目覚まし時計、そして家具…。男性に確認しながら、遺族に引き渡す物と処分する物を分ける。

 「こちらは供養でよろしかったですよね」。七人の作業員を束ねるリーダー役の本田啓夫(たかお)さん(29)が男性に尋ねた。女性の家族が残したアルバム。段ボール箱で四箱分。提携先の寺院の僧侶が、他の現場で引き取った遺品と共にお経を上げて弔うという。「遺品への思いは十人十色。ごみだから、とにかく全部持って行ってくれという人もいる」。作業の手を休めることなく、本田さんが言った。

 整理は四時間半ほどで終わった。二階建て、台所を含めて五部屋。依頼主の男性は、がらんとした家の中を見渡し、「やれやれという思いだ」と話した。「でも、叔母の家族が暮らした家が無くなってゆくことへの複雑な思いもある」。費用は二十八万円。家は解体して更地にし、不動産業者に売るという。

 男性は女性が大切にしていた着物や足踏みミシンなどを形見として残し、ほとんどの遺品がトラックに積み込まれた。中古カメラや家庭用ゲーム機などは業者が遺族から一度買い取り、ネットオークションやリサイクル店で次の買い手を探す。

 それ以外の遺品は無償で引き取られるが、業者がごみとして廃棄するのはわずかだ。「基本はリサイクル。捨てるのではなく、故人が大切に使っていたものを別の人に使ってもらう」。本田さんはそう話し、続けて言った。

 「需要があるのは日本だけではない。行き先は海外にも広がっている」

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