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教育

内容や回数、自治体で差 学校遊具の安全点検に同行

児童の頭の大きさを想定した模型を使い行われた定期点検=岐阜県大野町の西小で

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 六月、大阪府北部地震で小学校のブロック塀が倒壊、女子児童が犠牲になった事故は、危険なブロック塀の緊急点検や撤去につながった。一方、同じ学校の敷地内にある遊具はどうなのだろう。ブロック塀の事故をきっかけに、小中学校の遊具の安全について調べてみた。

 遊具には安全基準がある。公園遊具メーカーなどでつくる日本公園施設業協会(東京)が、国土交通省の指針に基づき二〇〇二年に定めた。文部科学省に確認すると、学校遊具の事故防止にも国の指針を役立てるよう全国の教育委員会に数回、通達を出している。

 実際はどうなのか。七月中旬、遊具の定期点検をすると聞いて岐阜県大野町の西小を訪ねた。

 同県大垣市の業者から派遣された男性点検員が、ペアを組んでチェックを始めた。ブランコはつり金具を前後に揺らし、破損や回転不良、音の異常などがないか見て触り、聞く作業を繰り返す。滑り台やうんていなどは、児童の頭の大きさを想定した直径二十三センチの球形の模型を使い、頭部を挟み込む危険箇所がないかも調べた。気温四〇度に迫る猛暑日で点検員の額に大粒の汗が流れた。

 二人は「公園施設製品安全管理士」などの民間資格を持つ専門技術者。こうした定期点検で、傷み具合をみる「劣化診断」と、設計上の安全基準を満たしているかをみる「基準診断」をしている。

撤去された遊具の部材を示し、教員に劣化状況を説明する日本公園施設業協会の講師=津市の芸濃小で

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 大野町は昨年度から全小中学校計八校で遊具の修繕や入れ替えを開始した。定期点検の結果、A−Dの四段階判定で「異常あり、修繕または対策が必要」なCランクが多くなったため。西小でも撤去予定の平行棒など使い古した遊具が目に付いた。「計画的に改修を進めているが、全校で終えるまで三年はかかる」と同町教委学校教育課の汲田勉課長補佐。「教室のクーラー設置も急がねばならず、今後も予算が付くのか…」

 八月、津市の小学校に市内の幼稚園、小中学校の教員ら約七十人が集まった。教員を対象にした全国唯一の点検講習会。国交省の指針は、大野町で見た専門技術者による年一〜二回以上の定期点検に加え、管理者による月一回以上の「日常点検」も勧めている。

 子どもの目線で遊具を見るといった心構えや、金具の摩耗具合で交換時期を把握する方法などを学ぶ教員の顔つきは真剣そのもの。主催した津市教委教育総務課の浜地秀幸さんに聞くと「遊具のどこをどう見たらいいかを学び、日常点検を任された教員の不安感を軽くしたい」。遊具で遊ぶ子どもの姿を日ごろから見ている教員だからこそ、わずかな変化や異常に気付く目を養えれば、事故の予防には近道かもしれない。

     ◇

 国の指針や遊具の安全基準を読むと、安全対策の基本的な考え方や注意事項は示されている。ただ「点検や改修などは法律で義務付けられているわけではない」と消極的な自治体もあり点検の内容や実施回数は実にばらばらだった。

 大野町のように劣化と基準の両診断を行う自治体があれば、愛知県知立市や名古屋市など劣化のみのところも。同市は点検業者を選ぶ入札の要件に、過去に点検の実績があれば有資格者であることを求めていない。

◆劣化による事故多発

 遊具の事故について消費者庁の二〇〇九年九月〜一五年末までの調べでは、発生場所が特定できた千七十件のうち、公園・広場が最多で六百六十一件、学校は百二十七件。老朽化が原因の事故も後を絶たない=表。全国の都市公園では今年三月、国交省が公表した調査で、設置後二十年以上経過した遊具が約48%を占め、三十年以上に限ると約三割。二十年以上の遊具は「鉄製十五年、木製十年」という日本公園施設業協会が示す標準使用期間を超えている。学校遊具について同種の調査はない。

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 小中学校設置数が多かった一九五七年と八四年のうち、後者からでも三十年以上が経過。岐阜大の春日晃章教授(子ども発達学)は、三十年以上前と現代を比べ「子どもの体力や遊びの経験値が落ちている。遊具の素材も変わり、古い遊具の腐食などは内部まで見ないと分からない。点検方法は、専門家を入れるなど統一すべきだ」と指摘する。

 (福沢英里)

 

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