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教育

校内業務、地域から参加 教員負担減へ「シニア」の力

児童と一緒に花壇をならす「JBの会」のメンバーら=愛知県武豊町で

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 忙し過ぎる教員の負担軽減策の一つとして、学校業務の一部を地域のシニア世代に担ってもらう「学校とシニア世代の連携」が注目されている。さまざまな世代の関わりが、子どもたちの成長を後押しするとの声も聞かれる。

 愛知県武豊町の富貴小学校では六月下旬、校区内の六十〜八十代で構成する「じいちゃんばあちゃんの会(JBの会)」のメンバー二十一人と四年生八十二人、保護者二十七人が、花壇の花を植え替えた。

 JBの会が一緒に活動するのは初めて。昨年は時間内に終えられなかった植え替え作業も、畑仕事に慣れた会の力で今年は時間内に完了。児童たちは達成感を味わった様子だった。保護者も昨年度は「原則全員参加」だったが、今年は負担を考慮し、一部を除き自由参加にした。これも会のおかげだ。

 会にもメリットはある。杉本綾子さん(67)は「子どもたちから元気をもらえる。『また来てくれた』と言ってもらえると、うれしい」と話す。

 会は昨年発足。同校は校内の木が非常に多く、その剪定(せんてい)が負担になっていた。教員の働き過ぎが問題になる中、寺田真一校長が地域の老人会に協力を呼び掛けたのがきっかけだ。現在四十二人が、登下校の見守りや剪定に協力している。寺田校長は「三世代同居の家庭も減り、上の世代との関わりは、子どもたちにとって貴重な機会。高齢者の知恵や経験に触れ、自然に尊敬の心が育まれる」と話す。

 ◇ 

 岐阜市は昨年度から、元気で意欲あふれる高齢者の力を地域に生かしてもらおうと、「ぎふスーパーシニア教育学講座」を始めた。

「一つだけ頑張ってみようか」と優しく声を掛ける馬場美佐緒さん(右)=岐阜市の徹明さくら小で

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 講座を受けた公民館職員の馬場美佐緒さん(69)は四月からほぼ毎日、「スーパーシニア」として同市の徹明さくら小学校を訪れ、給食の配膳を手伝っている。

 「エビ、苦手なの」と申し出る子がいれば、かっぽう着姿の馬場さんが「一個だけ頑張ってみようか」と優しく声を掛ける。アレルギーがないことは確認済みだ。

 おかずをよそう子どもに手を貸すのでなく、おかずが全体に行き渡るか、目を配る。残ったご飯は、おにぎりにし、苦手な食材や食べたことがない食材でも、はしを付けてもらうため、声の掛け方に知恵を絞る。

 一年二組の担任、岩井麻希先生は「大助かり。おかずをこぼしたり落としたりした子の対応で給食が食べられないこともしばしば。余裕を持って子どもたちに接することができます」と笑顔を見せた。藤田忠久校長は、子どもと接する馬場さんの姿勢を見て、協力を求めた。藤田校長は「期待以上の効果。担任のサポートに入ってくれるだけで現場はゆとりが生まれる。経験豊かな地域の方との交流は、子どもたちの成長にもつながる」と話す。

 岐阜大大学院教育学研究科の吉沢寛之准教授が昨年、岐阜市内の小中学校の児童生徒、保護者、教員、地域住民約三千六百人を調査したところ、住民や保護者の連携意識が高いほど、子どもの地域への愛着が高まり、学習意欲や社会性を向上させることが分かった。吉沢准教授は「シニアにはぜひ、保護者の良きサポーターとしても協力してほしい」と話す。

 ◇ 

 地域のシニア世代と学校の連携は、文部科学省の中央教育審議会の学校における働き方改革特別部会などでも関心を呼んでいる。学校事務に詳しい愛知教育大の風岡治准教授によると、二〇〇二年度に学校が週五日制になり、土曜日の児童らへの対応を巡り地域と学校の距離が縮まった。

 二〇年度から小学校で実施される次期学習指導要領は、地域と学校が連携する「社会に開かれた教育課程」の実現を求める。シニア世代との連携に注目が集まるのは、団塊の世代の定年退職で元気な高齢者が地域に増えたことと、外部人材で多忙を解消したい学校の思惑が重なったためという。

 ただし、「学校と地域で教育の目標を共有すること」が連携の前提だ。目標が一致していないと、シニア世代の頑張りが空回りし、学校、地域双方の負担感につながる。学校と地域の人が話し合う場を持ち、コミュニケーションをとることが重要だ。

 (福沢英里、佐橋大)

 

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