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教育

特別支援での工夫、通常学級に取り入れ

【ひと目で分かる】 ロッカーの整頓の仕方が示された写真=愛知県武豊町の武豊小で

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 すべての児童や生徒が安心して学べる分かりやすい授業を目指し、特別支援学級や通級指導の工夫を教室に取り入れる学校が増えている。教員の指導力の向上が課題で、来年度からは教員養成の過程で理解を深めるための仕組みも新たに始まる。

 愛知県武豊町の武豊小学校。一年生の教室に入ると、机の上の筆記用具は鉛筆と消しゴムだけ。置く場所は机の右上に決められ、目印のシールまである。同校に三人いる特別支援教育コーディネーターの一人、清川奈美先生は「必要な道具だけを出し、筆箱を引き出しにしまえば、授業に集中しやすい」と説明する。

 板書もひと工夫。その日の授業の流れが黒板の左端に書かれ、今どこを学んでいるかが分かるよう矢印で示す。授業の始まりと終わり、学習内容が目で見て分かるので、担任の指示や説明も伝わりやすい。

【黒板に授業の流れ】 何を学んでいるか見て分かる板書=愛知県武豊町の武豊小で

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 どの学年にも共通するのが、落ち着いた教室環境づくり。黒板の隣にある棚のガラス戸に内側から画用紙をはって中が見えないようにするのは、目から入る刺激を減らすため。みんなで使うロッカーや掃除用具入れの整頓の仕方は写真で示す。水筒も専用のかごが置かれ、ひもが邪魔にならないよう本体に巻き付ける。「大体」「適当に」は混乱のもと。「どこに」「どのように」置くかが、ひと目で分かれば、どの子も自分でできるようになる。

 同校では一九七四年に特別支援学級が開設された。通級指導が始まったのは十五年前。通級は通常学級に在籍していて、発達障害など比較的軽い障害がある児童が、別室で専門教諭から受ける指導のこと。特別支援学級と通級指導で培ったノウハウを生かそうと、誰もが使いやすい「ユニバーサルデザイン」の考え方を三年ほど前から通常学級の授業に応用した。二〇一五年度から二年間は、同様の趣旨で県の委託を受けた武豊町のモデル事業にも並行して取り組んだ。

【刺激を減らす】 中が見えないように工夫した棚のガラス戸=愛知県武豊町の武豊小で

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 支援が必要な児童が分かりやすい授業は、すべての子どもにとって分かりやすい。奥村和人校長は「子どもたちにとって学校が安心して生活できる場所になり、規律を守ろうという意識も生まれた。結果的に互いを認め、居心地のよい学級作りにつながっている。学校でこそ身に付けてほしい社会性が育っている」と子どもたちの変化を受け止める。

◆教員のスキル向上必須

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 一二年に文部科学省が行った調査によれば、全国の通常学級に在籍する小中学生の6・5%に発達障害の疑いがあった。一七年に通級指導を受けている小中学生は十万人を超え、十年前に比べ約二・四倍に増えた。発達障害は自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)といった障害の総称。支援を必要とする児童生徒の増加で、教員側も障害への理解を深め、通常学級での指導スキルを向上させることが求められている。

 国は昨年、教員を目指す学生が教職課程で学ぶ内容を規定する「教育職員免許法」の施行規則を改正。来年度から新たに、特別な支援を必要とする幼児や児童生徒への理解を学ぶ項目が独立し、一単位以上の必修科目となる。同省教職員課は「現代的な教育課題に対応した」と話す。

 愛知県長久手市の愛知淑徳大文学部教育学科では先行して、「通常の学級における特別支援教育」と題した講義で一年生が発達障害への理解や対応の仕方を学ぶ。例えば声かけ。「ちゃんとあいさつしよう」「静かにしなさい」ではアドバイスにならない。「相手を見てあいさつしよう」「友達が話しているときは口を閉じよう」などと、実際のクラス運営を想定した指示の出し方などが学べる。

 指導する佐藤賢准教授は「支援の最終目標は、障害のある子が、特性や苦手も含めてその子らしさと認められ、多数派のクラスメートと折り合っていけるようにすること」と説明。現職教員についても、各地の教育センターや教育委員会などが主催する夏休み中の研修で学んでほしいという。

 (福沢英里)

 

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