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教育

小学校で道徳教科化 悩む通知表「評価」

子どもが自分で考えやすいよう板書を工夫した道徳の授業=愛知県豊橋市の羽根井小で

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 四月から小学校の道徳が教科となり、今、学校は評価に頭を悩ませている。子どものわずかな変化や成長もとらえたいと、授業を工夫したり、保護者に授業を公開したり。愛知県から道徳教育の研究推進校の指定を受けた二校を訪ねた。

 「生まれた時のことで、おうちの人に聞いたことを教えてくれる?」−。愛知県豊橋市の羽根井小学校。今月十六日、授業参観で保護者が見守る中、四年生を受け持つ山岡亜矢先生が子どもたちに問いかけた。

 山岡先生は、子どもたちが保護者から聞き取った内容を黒板の左端に書き連ねた。「母親になることは不安だけど守ってあげたい」「震えるくらいうれしい」…。誰が発言したかが分かるよう児童名のマグネットも付けていく。青のチョークで囲み、目立たせた。

 続いて教科書を音読。いとこが生まれると聞き、うらやましくて素直に「おめでとう」と言えなかった主人公が、母親から、妊娠中にバイクで転んで自分の命が危なかったことを聞く、という内容。主人公がどんなことを考えたか、グループで話し合った。山岡先生は黒板の中央に、「赤ちゃんが生まれるのは大変」「神様がさずけてくれた」などの発言を書き出し、主人公が命について心情を変化させたことを浮かび上がらせた。

 同校では、二〇一三年度から「考え、議論する」道徳に向けて授業改善に取り組み、「羽根井スタイル」をつくりあげた。議論が活発になれば、子どもそれぞれの思考の深まりや変化なども教員が把握しやすくなる。

 羽根井スタイルは、子どもたちの発言や気持ちの変化が分かるように板書は左から右へ横書き▼子どもに考えさせるため、表情がないシルエット絵を使う▼グループやペアで話し合う−などが柱。授業の進め方についても子どもたちが自分の思いを語りたくなるよう、テーマの切り口を自分たちで決めさせることも。低学年の場合は「ずるい」「かわいそう」など子どもが発したつぶやきから、高学年は「心に引っ掛かったこと」「疑問に思ったこと」から入る、という具合だ。

 山岡先生は昨年度、板書の画像を学級通信に載せ、子どもの成長を保護者と共有した。文部科学省も学習指導要領の解説で、子どもの健やかな育ちを支えるには家庭や地域の協力が不可欠として、家庭や地域社会との連携に触れている。「考え方の選択肢を広げるのが道徳。学校の方針を家庭にも伝え、子どもの育ちを一緒に見守りたい」と山岡先生は意欲を示す。

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 昨年度指定を受けた安城市の安城南部小学校でも評価方法に工夫を重ねる。教員が作ったワークシートに記録する方法をあらため、昨年度から三年生以上で「道徳ノート」を活用、子どもも教員も好きなときに読み返せるようにした。ノートには授業の最初と最後に、考えたことや気付いたことを書かせる。書くことが苦手な児童には感想から始めさせ、書き出しの表現を具体的に指示したり、少しずつでも書けるように声をかけたりしている。ノートの蓄積により、一コマの授業単位でなく、長期間の子どもの学びや成長をとらえられるようになりつつあるという。

子どもが感じた思いを授業の最初と最後に書き込む「道徳ノート」=愛知県安城市の安城南部小で

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 道徳の評価は、ほかの教科と違い、数値ではなく文章で通知表に記される。文字数やいつ評価を書くかなどは学校長や各教育委員会が判断。同校では三学期の通知表に記入する。

 ただ、現実にはノートの記録だけで成長をとらえることは難しいという。教務主任の山元智子先生は「何をもって評価するかは検討段階。クラスメートと衝突しがちだった児童がうまく付き合えるようになったなど、行動のちょっとした変化も見逃さないようにしたい」と気を引き締める。

   ◇

 「道徳授業をおもしろくする!」(教育出版)などの著書を持つ愛知教育大の鈴木健二教授は、教科化した道徳の授業で大切にしたいポイントとして、「新たな認識が加わる」「従来の認識が深まる」の二点を挙げる。「『親切って、友情ってそういうことだったのか』と子どもたちが知る喜びを得られるような授業なら、意見も出やすくなり、わずかな変化もとらえやすくなる」と指摘。価値観や考え方は教員によってもそれぞれ。「先生も一緒に育つ時間ととらえて」とアドバイスする。

 (福沢英里)

 

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