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「科学的理解」が授業の軸足に 「情報」大学共通テストに導入検討

コンピューターに映したネットワークの図を基に、情報の動きに関する課題に取り組む生徒たち=愛知県豊田市の豊田西高校で

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 大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト」への導入を検討することが五月に明らかになった高校の教科「情報」。すべての高校生が学ぶ教科として導入されてから今年で十五年、生徒たちは、どんな授業を受けているのか。普段の授業を取材した。

 愛知県豊田市の豊田西高校は、普通科だけの進学校。一、二年で週一時限ずつ「情報」の授業がある。

 五月下旬、コンピューター室では、二年の文系の生徒が「情報伝達の仕組み」を学んでいた。前の授業までに、インターネットでは、データは小さく分けて、宛先の情報などを加えた「パケット」という単位で送られていることを学習。この日は、そうしたデジタルデータが、どう動くかを理解する授業だ。

 生徒たちは、ネットワークの模式図を見ながら、宛先ごとに経由するルーター(通信装置)の数などをまとめる課題に取り組んだ。宛先によっては、データの経路が複数あり、経由するルーターの数も異なることを確認。ルーターはそれぞれがデータを送る方向を決める。金子絵美教諭は「ルーターは何を基にルートを選択しているのだろう?」と問い掛けた。メトリック(経路の論理的な距離を表す指標)の少なさではないかとの答えが生徒から返ってきた。

 授業は「情報」の科目の一つ「情報の科学」(標準二単位)の教科書に沿っており、特別な内容ではない。

 この科目では、情報技術や情報社会の基礎知識を押さえた上で、テキストによる簡単なプログラミングや、情報を効果的に分析して問題解決に役立てる思考法などを学ぶ。時にはコンピューターでの実習も交え、情報の理解を深めていく。

共通教科「情報」の教科書

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 「情報」は二〇〇三年度に始まった教科。すべての高校生が学ぶ共通教科「情報」と、情報科など、主として専門学科で開設される専門教科の「情報」がある。共通教科「情報」には「情報の科学」「社会と情報」(同)の二科目があり、どちらかを必ず履修しなければならない。

 「情報の科学」は、情報の科学的理解を重視する科目。「社会と情報」は、デジタルデータの特徴やインターネットの仕組みを学ぶ。情報技術との関わり方を身に付ける色合いが強い。

 個人情報や著作権の取り扱いといった情報モラル、情報セキュリティー、情報の効果的な伝え方などは、両科目で共通して学ぶ。履修する科目や学年は各学校が決め、「社会と情報」を選ぶ割合が高いとされる。

 課題もある。中央教育審議会(中教審)は一昨年十二月、学習指導要領改定に向けてまとめた答申で、教科「情報」について「情報の科学的な理解の指導が必ずしも十分ではない」とし「教員の専門性向上が急務」と挙げた。情報教育に詳しい電気通信大大学院の中山泰一准教授は「情報科は専任の教員が少なく、多くの教員が他の教科も担当している。研修もままならない」と、背景を指摘する。

 二二年度実施の新しい高校の学習指導要領では、科目を再編。データの活用やプログラミングの基礎を学ぶ「情報1」が必修になる。「情報の科学」にあるような「テキストによるプログラミング」を、すべての生徒が学ぶよう改めるなど、情報の科学的な理解を重視する方向だ。ビッグデータの分析につながるデータサイエンスや、発展的なプログラミングは、選択科目「情報2」で扱う。

 大学入試センターは、新学習指導要領で学んだ生徒が受ける二四年度実施の大学入学共通テストから「情報」を試験科目に加える政府の方針を受け、詳細をこれから検討する。

 「情報」を入試科目にしているのは現在、情報系の学部など、ごく一部に限られる。中山准教授は「多くの生徒が受けるテストの科目になれば、高校の意識が変わり、情報に力を入れようとなる」と予測。「情報を科学的に理解することは、情報社会を生きる上で文系、理系問わず必須の素養」と、高校生にはプラスに働くとみる。同時に、情報1の必修で教員の専門性が一層求められると考える。

 (佐橋大)

 <情報> 社会の情報化に対応するため、2003年度に始まった教科。本来の教科の趣旨と異なり、コンピューターの操作法の習得に多くの時間が割かれているとの指摘を踏まえ、13年度、当初の3科目から現在の2科目に再編された。

 

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