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教育

「世界の中の日本」意識 22年度新設の「歴史総合」

資料から読み取ったことを話し合う歴史総合の授業=神戸市東灘区の神戸大付属中等教育学校で

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 今の小学6年生が高校生になる2022年度から、高校の地理歴史科は、近現代の日本史と世界史を学ぶ「歴史総合」が新設され、必修科目になる。先行実施している学校の様子を伝える。

 中高一貫校の神戸大付属中等教育学校(神戸市)の四年生(高校一年生に相当)が四月に受けた歴史総合の授業。この日は、歴史の学び方を学ぶ、導入の単元「歴史の扉」だ。

 中世ヨーロッパでのキリスト教の役割を考えようと、絵から教皇と王の関係を読み取り、クリスマスや神前結婚式など現代も続く風習の知識も使って、生徒たちが話し合った。細かい史実を覚えるのではなく、資料から歴史を読み取り、事柄の因果関係などを考えるのが中心の授業。ここでなじんだ歴史の学び方を、産業革命や二つの世界大戦など、歴史総合が主に扱う近現代史の学習に応用する。

 奥村暁教諭は授業の途中、欧州と日本の中世社会との比較を促す言葉を挟んだ。「意図的に『同時代の日本、世界はどうだったのか』を考えさせるようにしている」と奥村教諭。世界の中での日本の歴史を意識させるのが狙いだ。

 歴史総合にあたる新科目「歴史基礎」の創設を日本学術会議が二〇一一年に提言したことを機に、一三年度から続ける授業。生徒たちの受け止めは前向きだ。昨年度、歴史総合を履修した五年生の湊あゆみさんは「広い視野で歴史を捉えるようになった」、一昨年度、同様の授業を受けた六年生の井上乃晏(のあ)さんは「今は日本史B、世界史Bを選択している。それぞれのつながりが理解できる」と話していた。

      ◇

 新たな必修科目「歴史総合」は、近現代史を学ぶ「日本史A」と近現代中心の「世界史A」を統合するイメージだ=図。指導要領では「世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉え」、近現代史を学ぶとしている。標準単位数は、付属中等教育学校の実践と同じ二単位(週二こま)。歴史総合の必修化で、日本史を高校でまったく学ばずに卒業する事態は解消される。歴史を通史で学ぶ生徒は「日本史探究」、「世界史探究」を追加で選択する。

 扱う時代を、十八世紀以降の近現代にほぼ限定する理由について、文部科学省の担当者は「現代に起きていることの原点は、近現代史にあることが多い。『歴史総合』は、現代を理解するために学ぶ歴史科目」と説明する。

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◆「暗記科目」脱し思考力育成狙う

 日本学術会議で分科会の委員長を務めた久保亨・信州大人文学部特任教授は「新科目は、主権者として、物事を判断するのに必要な歴史認識を身に付ける教科」と、提言に込めた思いを明かす。

 教科として自国史(日本史)を世界史と別に学ぶのは、世界的に珍しい。日本史では「ほぼ日本だけの歴史」を学び、世界史では「日本を除いた世界の歴史」を学ぶ。その結果、日本史と外国の歴史の関連づけが弱いままに。「グローバル化した現代には、それにふさわしい教科が必要」として新教科を提言した。

 久保特任教授は「外国人と対話する機会が増えている。日本と他国の歴史を比較し、共通点や差を見つけ、主体的に歴史を語る力が求められている」と指摘。その力を付けるため「知識詰め込み型」から「思考力育成型」への転換も提言では打ち出し、指導要領にも趣旨が反映された。

 ただ、目指すような教科にするには課題もあるという。「『思考力の育成』につながるような教科書作りや授業法の共有化が必要。大学入試も変わらないと『暗記科目』から脱却できない」と久保特任教授は考える。

 (佐橋大)

 <高校の地理歴史科> 現行の学習指導要領は世界史Aか世界史Bから1科目と、日本史A、B、地理A、Bのうちから1科目の合計2科目4単位以上を必履修と定めている。基礎的な内容のAは標準単位数が2単位で、受験科目となるBは4単位。新学習指導要領では、歴史総合と並んで、地理の新科目「地理総合」(2単位)が必修化。地理をさらに深く学ぶには「地理探究」を選択する。

 

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