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教育

<NIE> 「朝活」で新聞利用

朝の会で記事を掲げて感想を述べる日直の川村知意君(右)と、高橋萌さん=愛知県大口町の大口南小で

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 朝、授業が始まる前のわずかな時間を使って、新聞に慣れ親しむ機会をつくる学校がある。ポイントは「短時間でも続けること」。まとまった授業でなくてもできる、新聞を学びに生かす取り組みを紹介する。

 愛知県大口町の大口南小学校。朝九時、五年生の教室で、日直の児童二人が黒板の前に立って新聞記事を広げた。「一分間スピーチ」の始まりだ。

 児童の視線が集まる中、日直の川村知意君が掲げたのは四月二十二日付、「受刑者脱走2週間」の見出しの記事。「塀のない刑務所」として、開放的な環境で受刑者の更生を図る愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から男性受刑者が逃げ、警察の捜査や現地の様子を伝える内容だ。

 「なんで脱走したんだろう」。川村君はこう疑問に思い、記事を選んだ。中身を簡単に説明し、「お金もないし、作業服だから逃げ切れない。警察は優秀だからすぐ捕まえてくれると思う」と感想も伝えた。

 続く高橋萌さんは平昌冬季五輪のスピードスケート女子五百メートルで金メダルを取った小平奈緒選手と、韓国の李相花選手との友情を書いた四月二十日の記事を紹介。「日本と韓国がこの二人のようにもっと仲良くしてほしい」と笑顔で締めくくった。記事はすぐ、みんなの目に触れるように教室の掲示板に張り出された。

 大口南小は昨年から、朝の一分間スピーチに新聞を使い始めた。「心に残った記事」「好きな分野」「テレビにはないニュース」というふうに、児童はそれぞれの基準で記事を選ぶ。昨年の五年生は最初、記事や感想を書いた原稿を丸読みしていたが、記事を要約して伝えられるまでに成長。児童からは「大事なところを見つけ、分かりやすくまとめられるようになった」「もっと詳しく調べたくなった」などの声が挙がり、学ぶ意欲が向上した。

 担任の奥田幸希先生は、自身があまり読んでこなかったという反省から、新聞に触れる機会を増やそうと心を砕く。「一分間だから参加しやすいし毎日やるから力もつく」と分析。五年生は今後、国語や社会でも新聞を使う場面が増える。「考えをまとめ、発表する授業に生かしたい」と、授業との連携も考えている。

      ◇

静まり返った教室で、新聞1面のコラムを書き写す3年生=岐阜市の岐阜西中で

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 岐阜市の岐阜西中学校では二年前から、全校生徒が週四日、朝の五分間、新聞一面に掲載されているコラムを書き写している。一本に三、四日かける。

 三年生の亀山嵩登さんは初めて取り組んだ一年生のころを「ただ写すだけで内容が頭に入ってこなかった」と振り返る。「細かい文字で読みにくい」と敬遠していた新聞を書き写すうち、「深く掘り下げた内容が書いてある」と文脈を意識するように。「文章を書くスピードが付いた」と話すのは若原梨帆さん。世の中の出来事を知り、「大人の意見や物の見方を知ることができた」と視野も広がった。校内の作文コンクールで入賞するなど、手応えを感じている。

 「わずか五分間でも黙って書く作業を毎日続けることで、生徒の姿勢も変わってきた」と松巾昭校長。朝礼で人の話を聞く時や掃除などに集中する姿が見られるという。今年は苦手意識の強かった書く力を伸ばそうと、三年生にコラムの要約、二年生には見出しを付ける活動を加えた。クラス全員への発表を通じて、話す力も育成したいという。

      ◇

 日本新聞協会(東京)は、朝や帰りの会などで短時間、継続して新聞を読む時間を「NIEタイム」と呼び、小中高校の実践をホームページで紹介。日本NIE学会長を務めた小原友行・福山大教授(社会科教育学)は「新聞は社会の変化に気づき、より良い社会をつくるにはどうしたらいいかを考える最適な教材」と指摘。「週末の朝に家庭で、親子で新聞を読んで話し合うことを宿題にしてもいい。新聞で学ぶ意欲を養い、学力の基礎体力づくりに励んでほしい」と勧める。

 (福沢英里)

 

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