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教育

価値観の多様性どう確保 道徳、中学でも来春教科化

架空の島のリゾート開発について議論する生徒たち=岐阜県関ケ原町の今須中で

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 これまで教科として扱われてこなかった「道徳」が、今春の小学校に続き、来年四月からは中学校でも教科に格上げされる。「愛国心」や「郷土愛」などの価値観の押しつけにならないかとの懸念がある中、現場の教員は、生徒が自ら考えを深める時間になるよう工夫している。ある授業を取材した。

 「もし、区長だったらどうする?」。岐阜県関ケ原町の今須中学校での二月の道徳の時間、三年生七人(当時)に藤井健太郎教諭(42)は、呼び掛けた。

 この日は、離島の地域振興が題材。人口減少と高齢化が進む離島にリゾート開発の話が持ち上がったが、島には「島の外観に合わないものは作らない」とする、先祖から受け継いだ島の憲章がある。島民の意見が二分する中、区長としてどう決断するか、生徒一人一人が考えた。

 授業には、学ぶテーマ「内容項目」が決められている。この授業の内容項目は「郷土の伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度」。だからといって、「郷土を愛しましょう」と考えを押しつけるようなことはしない。「郷土愛」も「愛国心」も一方的に教えるものではないからだ。「郷土愛の形も多様だと気付いてもらえれば」と藤井教諭は授業を組み立てた。

 生徒たちは意見を出し合った。「経済は大事。でも、美しい自然は守らないといけない」「リゾート開発はダメ。祖先との約束を破ってはいけない」といった意見のほか、「大きな建物を造らずに、空き家を活用し、人を呼び込めばいい」「反対の人の意見も取り入れて、水をろ過する施設を造る」と、賛成、反対だけでない、独創的な解決策も飛び出した。どの立場でも、島の将来や先人とのつながりを真剣に考えていることも確認した。「自分たちの住む今須の地域のため、何ができるか」を一人一人に考えさせて、締めくくった。

 藤井教諭は、多様な価値観を意識することに心を配った。会員制交流サイト(SNS)の普及で、同じような考えの人同士がインターネットでつながり、違う考えの人たちを拒絶する風潮の強い世の中。だからこそ、生徒たちには、考えの異なる人たちとも共生し、話し合いの中から解決策を見つけ出す力を学校で身に付けてほしいと願っている。

 「人任せにせず、社会に主体的に関わることができれば、その社会を大切にしようという気持ちは芽生えてくる」。社会科教諭として取り組む主権者教育も道徳教育に生きると言う。

 教科化によって道徳の授業で変わる点は、文部科学省が検定した教科書を使うようになることだ。小学校では、この四月から使われ始めた。中学校では現在、検定を経ていない副読本を使っているが、来年四月には教科書に置き換わる。

 道徳で学ぶ二十二項目が、学習指導要領で決められている=表。「公正・公平・社会正義」「生命の尊さ」「向上心・個性の伸長」などが含まれる。副読本も教科書も、この項目をテーマにした読み物で構成されている。同省の担当者は「学校の工夫で、さまざまな教材も使える」と説明しており、教科書も使いながら、独自の教材で議論する授業や、教科書の読み物を途中まで読み、話し合う授業も可能だ。

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 道徳の授業について同省は、学習指導要領の解説書で「特定の価値観を生徒に押し付けたり、主体性を持たずに言われるままに行動するよう指導したりすることは、道徳教育の目指す方向の対極にある」と指摘している。また、学校の道徳教育は「(教科の)道徳を要として、学校の教育活動全体を通じて行う」と定めている。

 評価も始まる。数値ではなく、子どもの成長ぶりを文章で記述する。時間数は週一こまで変わらない。

 (佐橋大)

 

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