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先生はどう見る!? 前川氏授業、文科省が報告要求 

コラージュ・河内誠

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 前川喜平・前文部科学省事務次官が名古屋市の八王子中学校で講演し、自民党文部科学部会の国会議員の働き掛けを受けた同省が、市教育委員会に内容の報告を求めた問題。学校現場も動揺している。十八歳選挙権が始まり重要性の増す主権者教育や、心の内側にも関わる道徳教育に取り組む先生は、どう受けとめたか。

 「前川さんをはじめ、その時々の話題の人に来てもらっていて、八王子中学校は大変おもしろい取り組みをしているなと感じます」

 安城学園高校(愛知県安城市)の社会科教諭、山盛洋介さん(38)は話す。昨年十月の衆院選挙で十代の投票率は40・49%と全体平均を13ポイント以上下回る中、生徒の社会への関心をどう高めるかが課題。「今起きている話題」こそ授業で取り上げたいという。

 「失敗も含め、いろいろな生きざまを聞き、生徒は価値観を揺さぶられ、自分の意見を形作っていく」と意義を語り、「ただ、そうした授業をした結果、長大な質問を送り付けられたのではたまらない。タイムリーな話題を避けていては、むしろ生徒を選挙から遠ざけてしまい、『主権者教育』にはならない。政治的な話題を避けるという学校の意識を変えないといけないのに、あの質問では現場が萎縮してしまう」。

 十年来、模擬投票を実施している三重県桑名西高校の水野悟教諭(62)は、「現場の教師を信頼してほしい」と言う。

 十八歳選挙権の導入に伴い国が推進した主権者教育で、二〇一五年に文科省は教員に「政治的中立」を求める通知を出した。水野教諭らも、公選法などに抵触しないよう念入りに確認して主権者教育に臨んでいる。

 「政治的中立に無頓着な教師はいないはず。教育現場の政治的な中立を確保するためにも、(文科省が)政治的な介入を許すのはおかしい」

 両教諭とも、今後も自身の授業を続けていくとするが、道徳教育に取り組む小学校教頭(53)は「現場は慎重にならざるをえないのではないか」と懸念する。

 「学校は地域のさまざまな方に話をしてもらう機会を設けている。教員の知識や経験だけではどうしても狭くなってしまうので、子どもたちにとって大事な機会だ。ただ事前の打ち合わせをしても、それ以外の話題が出ることもある。そのずれがこわい」

 外部の人材を招いて道徳教育を実践してきた小学校教諭(54)は、「そこまで介入されると、われわれは何もできなくなるというのが正直な感想」と衝撃の大きさを語る。

 「僕らは文科省が、国会議員の政治的圧力から守ってくれることを前提に授業をしている。防波堤の役目を担ってくれるはずが、政治の圧力に屈してしまって寂しく思う。現場の教員は誰に守ってもらえるのだろうか」

◆「不当な支配」の可能性

 <教育法や教育課程論に詳しい中部大現代教育学部の子安潤教授の話> 国会議員の照会後、文科省が名古屋市教委に授業内容の報告を求めたことは、教育基本法の禁じる「教育の不当な支配」に当たる可能性が高い。「不当な支配」には、二〇〇三年、東京都の特別支援学校での性教育に都議らが介入したことが認定されている。行為自体は違法と判断されたが、教育現場は萎縮し、日本の性教育は世界から大きく後れを取った。今回も萎縮を招く懸念がある。

 道徳教育が行われる学校の場に、「停職相当」とされた前川さんを講師として招いたことに文科省は疑問を呈しているが、文科省は、価値観を教え込まない「考え、議論する道徳」を掲げているはず。間違いをした人は一切呼んではいけないというのは、「考え、議論する道徳」に反するのではないか。

 (佐橋大、福沢英里)

 

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