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教育

<スクールセクハラを考える>(下) 誰もが起こす可能性

 学校で起きる性被害「スクールセクハラ」を防ぐには−。児童生徒へのわいせつ・セクハラ行為などで処分される教員が増える中、各都道府県教育委員会もさまざまな対策に乗り出している。先進的な取り組みや専門家への取材からヒントを探った。

◆千葉、神奈川 生徒に実態アンケート

神奈川県教委が高校生らに実施しているアンケートの質問事項

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 「こんな先生いるのかな」「密室で一対一にならないように普段から気を付けているけれど」

 昨年四月、長野県飯田市上郷小学校であったスクールセクハラ防止の校内研修。全教員四十六人が四、五人に分かれ、県教委の資料を基に感想を出し合った。

 同県の研修は、学校ごとに小集団で、ワークショップ形式を採っているのが特徴。資料には「男性教員が補習名目で女子生徒を呼び出し、肩をもませる」「女性教員が生徒の肩に触れて話す」など具体的な事例が並び、「一対一の密室をつくっていないか」など三十項目の自己点検表も付く。学年ごとに集まり問題点や日頃の注意点を確認した。

 県教委は二〇一六年度から、こうした研修をするよう県内の全小中学校、高校、特別支援学校に通知。担当者は「過去のわいせつ事案を分析した結果。同僚との対話で自身を率直に出し自己認識や他人への理解を深めるのが目的」と話す。

 同校の教頭(54)は「話す中で原因や背景を深く知りわいせつ行為は『特異な人が起こすこと』ではなく、誰でも起こす可能性があるという当事者意識が生まれる」と意義を説明する。

 子どもを対象に対策を講じる自治体もある。千葉、神奈川両県は全国でも珍しい生徒への実態アンケートをしている。神奈川県教委は〇六年度から三年に一度、一三年度からは毎年、高校や特別支援学校高等部などの全生徒に実施。担当者は「相談しにくい性的な内容を把握したい」とする。

 セクハラとは何かを記した用紙や質問、回答用紙、返信封筒の計四点を配布。学校と学年は必須だが名前は任意で、生徒は自宅で記入する。自身や周りがセクハラを受けたか、誰からか−など八項目に答え、該当した場合は教委へ送る。

 結果は対応と防止に役立てる。教委は回答が来たらすぐに回答者の学校長に連絡し、事実確認と再度の教委への報告を求める。内容を教員全体で共有するほか、全生徒に「アンケートが届いた。困っている人は相談を」と呼び掛けるなどしてもらう。「先生が性的な話をして嫌だった」「体育の授業で体を触られて不安だった」など具体的な声は、研修や啓発資料でも紹介する。

 「被害を受けた」などと回答した生徒数は一三年度は百十四人だったが、一六年度は五十人。担当者は「続けることで抑止力になっている。セクハラ行為の共通認識が、教員や生徒たちの間に育った成果も大きい」と強調する。

◆「何でも言い合える雰囲気が被害防ぐ」 NPO法人代表に聞く

教員によるわいせつ行為などの相談を受ける亀井明子さん。相談は母親からが多い=大阪府守口市で

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 スクールセクハラの防止に学校では何が大切か。NPO法人「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク」(大阪府守口市)の活動を二十年前に始め、教員のわいせつ行為などの相談を二千件超受けてきた亀井明子代表(70)に聞いた。

       ◇  

 遠回りに思えるが、研修はスクールセクハラについて知り、「一部の変な人が起こすこと」という誤った認識を改める上で重要だ。教職課程がある大学や学校などで研修を開くときは必ずワークショップ形式にしている。それはみんなで言葉に出して考えることで、性への価値観の違いや考え方の偏りに気付けるから。

 研修をすると「これほど先生同士で話したことがなかった」という感想も多い。何でも言い合える雰囲気は被害を防ぐ。被害が明るみに出る前、疑わしい行為を目撃したり聞いたりしていた先生も少なくない。管理職が被害の相談や報告をされた時、適切に受け止められれば被害の拡大を防げるかもしれない。

 研修はPTAと一緒に受けるのも良い。スクールセクハラへの共通認識ができれば、保護者が子どもから相談を受けた際、安心して先生に「話してみよう」と思える。

 (世古紘子)

 

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