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教育

<スクールセクハラを考える>(上) 「人生を奪われた」

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 教え子の体に触る、盗撮するといったわいせつ・セクハラ行為で処分を受ける教員が後を絶たない。信頼していた先生からの被害は、男女とも児童生徒の心身に深い傷を残す。実態や背景、防止策などから、学校で起きる性被害「スクールセクハラ」について2回に分けて考える。

 「娘たちは先生は絶対的な存在で信頼していたと思う。立場を利用して、学校を不安で嫌な場所にしたことに腹が立ちます」

 昨年十一月、名古屋地裁岡崎支部。勤務していた小学校で複数の児童にわいせつ行為をしたとして懲戒免職になった臨時講師の男(30)=強制わいせつ罪で公判中=を前に、保護者が証人尋問に立った。「トイレに一人で行けなくなった」「泣いたり怒ったり不安定になった」など被害後の様子に触れ、「これから内容を理解した時、より大きな苦しみを感じると思うと不安だし許せない」と述べた。

 被害の影響は、その後の人生に及ぶことも少なくない。中部地方の四十代女性は高校一年の時、男性教師から被害を受けた。部活帰りに呼ばれた進路指導室で突然下半身を触られ、キスをされた。ただ驚き、混乱して「どうやって帰ったかも覚えていない」。口止めされ、誰にも明かせなかった。

 入試の監督だった教師は入学後、「勉強頑張ってるね」とよく声を掛けてくる「周りから見ても良い先生」だった。「認めてもらえている気持ちが強く、悪い人という認識はなかった」。その後も夜中に呼び出し、教師の車や自宅で行為に及ぶなど、女性が意を決して拒む三年まで被害は続いた。

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 「従った自分をすごく後悔している。物のように扱われ、『こんな自分は早く死んだらいいのに』という気持ちが常に脳裏にあった」。そう話す女性は卒業後、男性との関係をうまく築けず転職や離婚を繰り返し、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)にもがいた。「先生という立場の人がなぜあんなことができたのか。人生を奪われた気持ち」と話す。

 性暴力被害者らを支援するグループ「Thrive」代表で、自身も被害に遭った涌井佳奈さん=名古屋市=は「いたずらやセクハラと言うと軽く聞こえるが尊厳を奪う犯罪。被害者の人生をじわじわとむしばむ」と重大性を強調する。

◆特殊な権力構造が背景 死角や密室多い学校

 文部科学省によると、二〇一六年度にわいせつ・セクハラ行為で懲戒免職などの処分を受けた公立小中高校の教員は過去最多の二百二十六人。一九九〇年度と比べ十倍以上、懲戒免職に限ると四十三倍だった。相手は自校の児童・生徒が全体の約48%と半数近い。行為は体に触る、性交、盗撮・のぞき、キスの順に多かった。

 増加について、神奈川大の入江直子名誉教授(社会教育学・女性学)は「わいせつ教員が増えたのではなく、九九年の改正男女雇用機会均等法施行でセクハラの認識が広まり明るみに出やすくなった」とみる。文科省は同年、公立学校のセクハラ防止義務が都道府県、市町村教育委員会にあると通知。二〇〇一年から児童・生徒へのわいせつ行為が発覚した教員は原則懲戒免職にするよう求めている。

 そもそも、なぜスクールセクハラは起きるのか。入江教授は「学校の特殊性」を挙げる。一つは権力構造だ。学校では大人と子ども、教員と児童や生徒、顧問と部員など力の差が生じる。「ただ、『対等な関係で教育活動をしたい』と思う教員は多く、権力の差を意識していない。児童や生徒側が、成績を付ける教員からの被害に嫌と言うのは容易ではない」

 死角や密室となる場所も多い。文科省によると、一六年度に行為場所として主に挙がったのは教室や保健室、生徒指導室。「安心な場所であるはずが、個別に呼び出されると一対一の密室が設定されてしまう」と危険視する。

 被害者の支援もしてきた入江教授は「安心安全な環境で学ぶことが保障されるべきなのに、学校で正反対のことが起きている。重大な人権侵害であり、対策が必要だ」と訴える。

 (世古紘子)

 

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