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教育

<変革2020> 愛知・八幡中、通年で「アクティブ・ラーニング」

地球儀も使って、時差を調べる生徒たち=愛知県知多市の八幡中で

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 二〇二〇年度から実施される新学習指導要領では、児童、生徒が主体的に対話し学ぶ「アクティブ・ラーニング」の推進がうたわれている。現場ではまだ大半が部分的な導入にとどまっている中、愛知県知多市八幡中学校では二人の教諭が、昨年四月から一年を通じてアクティブ・ラーニング形式を徹底させ授業をしてきた。この実践を周りの教諭はどう見たか。対話型の授業が生徒にもたらすものとは。

 二教諭は、榊原範久教諭(37)と西本龍一教諭(30)。講義形式の授業はやめて、知識を説明するための板書はしない。生徒に身に付けてほしい目標は定めるが、「あくまで教師の役目は生徒が主体的に学ぶのを促すこと」とする。一月下旬に研究授業を公開し、それぞれ一年生の学級で、時差を学ぶ社会科の授業をした。

 「時差の仕組みをワークシートにまとめ、日本が一月二十六日午前九時のとき、ニューヨークの時刻について、地球儀と地図を使って、友達二人に分かりやすく説明できる」と、具体的な学習目標と課題を書いたワークシートが配られた。課題は教科書をよく読めばほとんど解けるが、中には「経度の差が一五度あると、なぜ、一時間の時差がある計算になるのか」と時差の本質に迫る内容もある。

 学び方を生徒が決めるのも、授業の特徴だ。生徒たちは立ち歩き、あちこちに相談の輪ができる。「地球は二十四時間で一周する。三六〇度じゃん。三百六十を二十四で割ると十五」。「だから一五度で、一時間の時差ができる」。話し合いを通じて、生徒たちは理解を深めた。近藤妃菜さんは「説明することで考えがまとまる。もう一回説明するときは、もっと分かりやすく伝えるため、いろいろ考える」と授業後、話した。

 こうした授業法は、アクティブ・ラーニング形式の一つで上越教育大の西川純教授が提唱する「学び合い」。一人の子どもも見捨てないのがねらいという。榊原教諭は二年間、同大の教職大学院で学んだ。

 生徒が間違ったことを教え合っていると気付いたときには「あれ、人によって答えが違っているぞ」と大きめの声で言い、間違いに気付かせる。共有したい生徒の発言があれば「○○さんが、いいこと言っているぞ」と、注意喚起する。

 「公式を教えるのではなく、問いを投げかけて、公式を引っ張り出す」「主役は生徒だが、教師も主体性を失わない」と榊原教諭。

 話し合いを左右するワークシートは、慎重に作る。作成に一時間ほどかけることもある。課題の難しさは適切か、深く考えさせる課題を入れているか、綿密に検討する。「アジアの地域でどこが一番成長すると思うか」と、正解のない問いを投げかけ、生徒に考えを述べさせ合うこともある。

     ◇

 授業は、近隣の小中学校教諭ら約六十人が見学。授業後、研究協議会が開かれ、「自ら学ぶ姿勢を身に付けるのには有効」「集中して課題に取り組める」「授業が楽しいと生徒が言っていた」とプラスの評価が出た。一方で、「目標の設定が難しいのでは」「慣れていない教師には大変」といった声も。知識の定着を不安視する参加者もいたが、知識を問うテストで生徒の成績は劣らないという。

 二教諭が試行錯誤しているのが、目標の難度。話し合うことで生徒全員が達成できる程度で設定するが、想定したほど生徒の理解が進まない場合は、もう一時間、同じ内容を学ぶ。時差の学習でも目標達成者は約半分で、欠席者も多かったので、同じ内容を再度別のワークシートで学習した。

 榊原教諭は「コミュニケーション力や協働する力を付けさせたい」と話す。西本教諭は「生徒たちは、だんだん話し合うことに慣れてきた」と手応えを感じている。

 (佐橋大)

 <アクティブ・ラーニング> 一方的な講義形式でない授業の総称。教師の関わり方や、話し合い方の違いで、さまざまな形がある。次期学習指導要領では「主体的で、対話的で、深い学び」と表現されている。文部科学省は、知識だけでなく思考力や表現力、学びに向かう姿勢を身に付けることを目指し、小中学校、高校での推進を求めている。

 

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