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教育

知識偏重見直し「素質」伸ばす 発展続く中国の教育現場視察

クラブ活動でロボットアーム作りに励む児童ら=北京市の北京育翔小で

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 世界2位の経済大国として発展を続ける中国。ドローン(小型無人機)や通信などのIT分野では、世界に名だたる企業も少なくない。中国政府が主催した日中友好交流事業で昨年12月に訪中し、急成長を遂げた国の教育現場を視察した。

 北京市北部の市立北京育翔小学校。全校児童三千七百六十人のマンモス校では放課後、四〜六年の児童が週一、二回のクラブ活動に没頭していた。日本の部活動に近いが、クラブ数は百ほどある。

 運動場では野球、サッカー、バスケットボール、武術、教室では水墨画、二胡(にこ)や古筝(こそう)の演奏など伝統文化に親しむ子の姿もあった。自作のロボットアームを操作していた「創造力クラブ」の児童らに話を聞くと、「設計とコーディネートが学べる」「能力向上につながる」と将来を意識した反応が返ってきた。

 活動費は国が負担。学外の有力講師を招くこともあり、陳永珍(ちんえいちん)校長は「技術系のクラブの人気が高い。活動に親しみながら潜在能力、素養を磨いてほしい」と説明する。

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 こうした教育は、より主体的、実践的に学ぶ「素質教育」の一環で、国際社会で通用する高い人間性を備えることを目指す。長らく知識偏重の詰め込み型を主としてきた中国が、改革開放政策で外資の進出が進んだ一九九〇年代以降、導入し、力を注いできた。

 上海市の南西約二百キロにある浙江省都の杭州市。ネット通販大手「アリババ」などIT企業の集積地として名高い九百万人都市だ。市青少年センターは、週末や長期休暇に近隣の子どもたちが集まる総合塾だ。

 学校で十分に経験できないスポーツ、ものづくり、文化活動など計百五十の講座が開かれ、昨年は二〜十八歳の延べ二十七万人が通った。全国に広がるセンターの先駆けとして約五十年の歴史がある。

 創作、発明分野に力を入れ、レゴブロックを使ったロボット作りは、約二十年前からある人気講座。自作のラジコン飛行機作りもあった。最新鋭の3Dプリンターは十六台あり、六歳から使える。黄建明(こうけんめい)主任は「素質教育の一大拠点と自負します。今後は人工知能(AI)の時代。特にロボットに関する基礎教育は、授業を補う重要な学びです」。

性教育の拠点として造られた「朝暉青春健康倶楽部」。廊下の壁には性交時の注意を促す文言が記載されたパネルが連なる=杭州市の朝暉中で

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 性教育を素質教育の一つと位置付けるのは、杭州市立朝暉(ちょうき)中学校だ。「責任を取ると決める」「十分に安全?」−。入り口近くの壁には、性交時の注意を呼びかける言葉が並ぶ。

 ここは二〇一五年末に完成した学内博物館「朝暉青春健康倶楽部(クラブ)」。奥には、男女の体の変化、胎児の成長、違法薬物など、思春期の若者が興味を持つ内容を模型や拡張現実(AR)を使って解説するコーナーがあった。

 張驪(ちょうり)副校長によると、中国では近年、性の知識不足を背景とするエイズウイルス(HIV)感染や十代の望まない妊娠が社会問題化。地域の性教育の充実のために施設を造ったという。呉林富(ごりんふ)校長は「生徒たちの素質教育の拠点です」と胸を張る。

 日本の文部科学省にあたる中国教育部基礎教育司の王岱(おうだい)副巡視員は、同国の教育ビジョンについて「教科書の勉強と並んで素質教育を進め、責任感、実践力、イノベーション(変革)力のある人を育てたい」と述べた。

 独自の経済圏「一帯一路」で世界進出を狙う中国。国際社会で活躍する人材育成を、幼い才能の芽を刺激する素質教育が支える。

 (那須政治、写真も)

 <中国の学校教育制度> 日本と同じ小中高大の順に「6・3(一部5・4)・3・4制」。9月〜翌年7月中旬の年2学期制。義務教育(小中)は2008年度から全面無償化され、15年度の就学率は99.88%。平日週5日制。都市部ほど受験競争が激しく、宿題や補習に追われる子も少なくない。

 

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