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教育

「考える社会科」へ転換 分析や議論で探究型授業

トマトの値段の考察から、経済の仕組みの理解を深める授業=岐阜市の東長良中で

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 社会科の授業が変わりつつあるという。知識の習得に力点を置いた従来型の授業法を転換して、児童、生徒に社会の情報を分析させ、議論させる探究型の授業に力を入れる教員も。情報があふれる時代だからこそ、情報を吟味し、考える力を付けさせたいという教員の思いが、変化の背景にあると専門家は指摘する。

 「どうしてA企業は売り上げを大きく伸ばしたのか、考えてみよう」。岐阜市の東長良中学校で十月にあった社会科の授業で、古田伸二教諭が呼び掛けた。

 三年の公民分野で、経済の仕組みを学ぶ単元の授業だ。実社会と結び付けて考えられるよう、古田教諭は、最近、売り上げを急激に伸ばした食品小売企業の実例を提示。この企業の商品が、地元に多くあるスーパーよりも高いことに触れ「高いのになぜ売れるのか」と問い掛けた。

 「きめ細かく配達してくれるから」「安全なものが欲しい消費者心理に放射性物質の検査で応えているから」。生徒たちは、資料からさまざまな要因を読み取った。生きた経済の学習だ。

 古田教諭は、さらに一押し。「もし、起業するなら、どんな会社をつくるか」。経営者の目線でも、この問題を考えてもらう試みだ。

 古田教諭は数年前から、考えることを重視した授業をしている。歴史では、元寇(げんこう)での自身の戦いを絵巻物「蒙古襲来絵詞(もうこしゅうらいえことば)」に描かせた竹崎季長(たけざきすえなが)の行動について、その理由をグループで考える授業もした。考える材料は、古田教諭が絵詞から抜粋した竹崎の言葉や年表。「十八歳で選挙権が得られる時代。情報をうのみにせずに自ら分析し、考えられる人になってほしい」と狙いを説明した。

 愛知県岡崎市の愛知教育大付属岡崎中学校でも十月、三年生が社会科で、日本の農業について議論した。

 生徒が農業生産者を事前に取材。授業では、先端技術の導入や大規模化、それを助けるための規制の緩和などが日本の農業に必要との意見が出た。一方で、「イメージほど実態は悪くない。イメージを変える情報発信が必要」との意見も。多様な意見から、日本の農業の抱える課題と、その解決策の理解を深めた。

 現実の社会に即した授業は以前から取り組み、最近は校外から問い合わせが増えたという。「自ら情報を集め、他の人の意見とも比べながら、事実に基づき意見を述べる。社会で生きるのに必要な力を養いたい」と指導した伊倉剛教諭は説明する。

◆情報化と新指導要領背景

 小中高校の社会科教育を研究している岐阜大教育学部の田中伸准教授は、授業の変化の背景に、情報化の進展をはじめ社会の変化があると指摘する。

 会員制交流サイト(SNS)などを通じ、真偽不明の情報が常に発信・更新される時代。子どもたちに、主権者としても、情報を見極め分析する力を付けさせたいと考える社会科教員は増えていると感じるという。

 さらに、後押しするのが、教育内容の基準を示す学習指導要領の改定。これまでは「何を教えるか」が重要だったが、二〇二〇年度以降実施される新指導要領では「どんな力が身に付いたか」が重視される。「知識だけでなく、それを使いこなし、現実社会を深く分析する力を付けることが必要」と田中准教授は話す。

 「大学入試も、教科書も、思考力を重視したものになる。高校入試も、同様の傾向だ。それに対応し授業を変えようという教師は増えている」

 一つのテーマを生徒同士で話し合わせたり、複数の資料を基に歴史の多面性に気付かせる授業をしたり。「民主主義は良いもの」と教え込むのではなく、生徒の先入観に揺さぶりをかけ、深く考えさせ、多様な価値観を認める授業だ。

 「子どもたちの理解度や価値観を把握し、授業の構成を調整しないといけない。教材を研究する時間の確保が今以上に必要だ」

 (佐橋大)

 

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