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新聞で教育の質高める 日本NIE学会で取り組み報告

 授業などで新聞を活用するNIE(教育に新聞を)の意義や研究成果を話し合う日本NIE学会(会員約三百六十人、二十団体)が十一月二十五、二十六日、京都府宇治市の京都文教大で開かれた。自由研究発表では、教員や研究者がこども記者活動や日本語学習などさまざまな場面で取り組んだ実践について報告した。一部を紹介する。

◆日本語学級の実践

日本語学級の児童作品を見せて説明する神部秀一教授=京都府宇治市の京都文教大で

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 NIEで楽しい日本語学習ができたら−。東京未来大こども心理学部の神部秀一教授(62)らは昨年度、群馬県伊勢崎市広瀬小学校の日本語学級で、切り抜き新聞作りをした。対象はベトナムやブラジル国籍などの五年生五人で、いずれも勉強する時に使う「学習言語」としての日本語は不十分。読み書きの力を向上させ、かつ母語も保持する。その上で、日本社会への理解を深めるのが目的だ。

 使ったのは全国紙が発行するこども新聞。好きな記事や写真を切り抜き、日本語や母語で見出しや感想を書き込む。四十五分間の授業で、A3用紙に各自が動植物やスポーツの記事を貼った。「でかい魚なだね」「サッカおもしろいね」など単語に間違いはあったが、鉛筆は動いた。

 校長からは「予想以上に貪欲に記事を読めた」と好評だったという。神部教授らは「新聞は他のメディアと違い、手に取って触れる。宝探しのような楽しさがある」と強調。感想から各児童が日本語のどこでつまずいているかが分かり「指導に生かせる」と話した。

 ただ、回数は昨年度は二回だけ。本年度も二年生以上に四〜六回と少なく、日本語学級の担当教諭に新聞を使った授業を合間にしてもらうなど工夫をしている。「日本語学級で新聞を使うことはハードルが高く、まだ実践は多くない」と神部教授。今月以降は愛知県でも試行し、広げていく。

 (世古紘子)

◆地域紙の「子ども記者」に

インタビューの練習をする子ども記者たち=京都府宇治市で(橋本准教授提供)

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 京都府南部にある宇治、城陽両市に住む小中学生二十九人は「子ども記者クラブ」に所属。地域紙「洛南タイムス」に記事を書いている。防災や人気の場所など、テーマはさまざまだ。

 新聞作りで子どもたちの郷土愛などを育もうと、京都文教大の橋本祥夫准教授(50)が新聞社などと連携し、二年前に始めた。知識だけでなく、課題を自ら見つける力や地域への愛着を持ってもらいたいと、試行錯誤している。

 本年度は、洛南タイムスの記者に、記事の書き方や写真の撮り方を習う「記者講座」を受けて、取材に臨んでいる。

 橋本准教授は「記者講座で、子どもたちの意欲が高まった」と感じる。取材の仕方が分かって、内容が深まり、取材の楽しさが増したようだという。子ども記者の撮った写真が紙面に掲載される機会も増えた。

 記者講座に参加した子どもたちへの調査では、地域の課題などの理解で個人差が大きいことが分かった。「全員が事実の奥底まで考えられるようにしていくのが今後の課題」と橋本准教授は話す。

 (佐橋大)

◆中学生がニュース選び

 新聞社は何を基準にニュースを選び、読者に届けているのか。その価値判断の基準を知ることは、ニュースをより深く理解するためにも重要だ。

 大阪府東大阪市縄手中学校の長越大輝教諭(25)らは昨年度、中学生が“編集長”になったら、どんな基準でニュースを選ぶかを大阪市内の学校で調べた。外国人観光客や専業主婦、高齢者など六つの対象に向けた朝刊を想定し、長越教諭が用意した十三の記事から三つずつ選んでもらった。

 浮かび上がった基準は主に二つ。一つは想定した読者が興味を持つと思われる記事を選んでいた。例えば、高齢者には被爆体験に関する記事を、中学生には「ポケモンGO」といった具合。もう一つは、編集側が読者に伝えたい記事を掲載候補にしていた。大阪の体感治安が最悪という記事は、女性に知ってほしいと専業主婦向けに選ばれた。

 一方で、先行研究がメディアが選ぶ時の基準として挙げた「商業的意図」や「記録性」などは出てこなかった。長越教諭は今回の実践を踏まえ、「中学生から自然には出てこなかったこれらの基準は、意図的に授業で教えたい。そうすることで、ニュースを読み解く力を養えれば」と話した。

 (世古紘子)

 

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