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<NIE> 特別支援教育で成果

生徒と新聞からロゴマークを探す笠井宏一教諭(中)=名古屋市南養護学校で

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 特別支援教育の場でできる新聞活用とは−。近年はさまざまな実践例がNIE全国大会でも報告され始め、関心が高まっている。新聞を使う特別支援学校や普通校の特別支援学級の先生を訪ね、取り組み例や工夫点、伸びる力などを聞いた。

◆社会とつながる“生の教科書” 名古屋市南養護学校

 九月中旬、知的障害がある生徒が通う名古屋市南養護学校高等部で社会科の授業があった。「きょうは新聞から企業のロゴマークを探そう」。笠井宏一教諭(50)が説明し、三年生十七人が慣れた手つきでページを繰り始めた。自動車販売店にメーカーと次々と切り抜き、用紙に貼っていく。

 全八回の授業では最後、生徒が就職や実習で関わる企業や作業所のマークを考える。この日は新聞を教材に「伝わるデザインは何か」を考えるのが目的。笠井教諭は「社名の頭文字や家の形になっていて分かりやすいね。参考にしよう」と呼び掛けた。

 笠井教諭は二年前、普通校から異動した。生活指導や部活動に約十五年間、記事を活用していたが、特別支援教育では経験ゼロ。模索しつつ、他者の人生や意見が多く載る新聞を活用することで「広く社会を知り、苦手とするコミュニケーション力を育みたい」と少しずつ取り入れた。

 特別支援学校では決まった教科書がなく「新聞は各教科の“生の教科書”になる」。総合の授業では「人の気持ちを察する力を」と、喜怒哀楽を表す写真探しに挑戦。社会科では海外ニュースから諸外国を調べ、五輪の記事に感想を添えて切り抜き作品を作った。就労を見据え、本年度は仕事関連の記事から、その内容ややりがいを読み取ってまとめた。

 生徒は障害の程度も十人十色のため、進めるには支援も必要だ。最初は新聞をめくる練習から始め、どこに何が載っているかから。授業を進める際も、混乱しないように「○○の写真を一つ探そう」「線に沿って切り取ろう」と手順を簡潔に、具体的に示す。

 最近はトランプ米大統領や北朝鮮の話題が生徒の間で出るなど、社会に関心が向いてきた。女子生徒(18)は「知らない情報を知れるのが楽しい」。別の男子生徒(18)も「就労先で人とコミュニケーションを取るためにも目を通したい」。笠井教諭は「新聞を通して生徒が社会とつながれる。特別支援学校でも、工夫次第でもっと活用できる」と手応えを口にする。

特別支援学級の児童が作った壁新聞を手にする守田みずも教諭=愛知県豊橋市の植田小学校で

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◆伝える力伸ばす新聞作り 豊橋市植田小学校

 愛知県豊橋市植田小学校の特別支援学級では、守田みずも教諭(45)が文章で伝える力を育てたいと、知的障害がある九人と新聞作りに励む。新聞は三種類。学校行事をまとめる「豆記者記事」のほか、有志数人で記事三本と漫画で仕上げる月数回の学級新聞、年三、四回全員で完成させる模造紙サイズの壁新聞と、バラエティーに富む。

 守田教諭は前任校から特別支援学級で新聞を作り八年目。新聞を使うにあたり、まずは「新聞は楽しい」と感じてもらえるよう破ったり畳んで上に乗ったりする遊びで親しんだ。「動機がないと続かない」と守田教諭。言葉で状況を伝えるのが苦手なため、写真を一文で表す練習もした。

 新聞作りの途中でもちょっとした手助けをする。例えば、ある子には学習活動の写真を見せて「うどんをこねた時の手の感触は?」など質問を繰り返す。「言葉を耕してから『じゃあ書いてみようか』と地道に進める」。壁新聞のトップ記事も全員で話し合って決め、「言いたいことは何か」を考えて一文ずつ短冊に書く。最後に組み合わせて記事に仕立てている。

 回を重ね、守田教諭は「読み手を意識して書いたり、言葉が出てくるようになった」と成長を喜ぶ。「新聞は発達段階に応じて参加できる。成果が形として見え、実際に読んだ保護者や地域の人に『すごいね』と言われることで、子どもたちに自己肯定感や自信も生まれる」と意義を話す。

 (世古紘子)

 

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