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<二つめの学舎 副次的な学籍>(下) 「副学籍制度」広がる長野県 

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 特別支援学校に通う、障害のある子が、自宅近くの小中学校でも学ぶ仕組みは、長野県では「副学籍」と呼ばれる。県内21の市町村に広がっている。一緒に学んだ証しとして卒業証書を小中学校でも受け取るなど、従来はほとんどなかった交流が定着している。

 長野県伊那市にある特別支援学校「伊那養護学校」高等部一年の男子は二年前、副学籍のあった高遠中学校(同市)で、生徒会役員選挙の投票をした。「うちの生徒だから選挙権はある」と校長が判断。「存在を認めてくれた。うれしかった」と生徒の母親は話す。

 男子生徒は当時、伊那養護学校の中等部に在籍。自閉症スペクトラムで、見通しを持てば安心して行動できる。高遠中では一つのクラスで学び、担任もいた。特別支援学校での活動を「新聞」にまとめ、月一回、仲間に伝えたり、部活動で頑張る友人の壮行会に参加したり。活動の内容は特別支援学校と中学の担任が本人、家族と相談し決めた。

 卒業証書も二つある。特別支援学校の正式な証書と、高遠中での副学籍用の証書。両校と家族で話し合い、中学の同学年の仲間の前で受け取った。校長や担任は正装で参加。両親は感激した。「交流はないの?」と高等部に入ったときに本人から聞かれたといい、中学での交流の深さを物語る。

 伊那養護学校の児童生徒のいる上伊那地方と隣接する岡谷市では、同市を含む九市町村すべてに副学籍の制度がある。十二年前に県内で初めて駒ケ根市が導入して広がった。

 副学籍のある児童生徒は本年度百十三人。希望しない場合を除き、「地元の子」として地域の小中学校の名簿に名前が載る。特別支援学校と小中学校の教員が話し合い、学習計画を作る。多くは、体育、音楽の授業や、運動会などの学校行事に参加する。年間五十日ほど副学籍校で学ぶ子もいる。学校からの印刷物の郵送といった間接交流を含め、年度当初、制度の利用を希望したのは75%。副学籍の児童を家庭訪問する小学校もある。

 副学籍の卒業証書を受け取る児童生徒は急増。昨年度、伊那養護学校の小中学部の卒業生二十七人のうち、二十五人が証書を受け取った。三人は副学籍校の卒業式にも出席した。「事例が積み重なり、保護者が前向きになる状況ができている。市町村の意識も大きく変わった」と副学籍を担当する渡辺孝次教諭は感じる。

 小中学校では、特別支援学校の児童生徒との「交流」が増えてはいる。学習指導要領が二〇〇二年度から交流の機会を、一一年度からは共同学習の機会を設けるよう定めているからだ。副次的な学籍もこうした背景から生まれている。ただ、交流は年二、三回程度が一般的で表面的になることも多い。長野県では、共に学ぶ意識を高める副学籍によって、内容を豊かにする知恵が現場から湧いている。

◆岐阜県は全員に「交流籍」

 岐阜県でも三年前から、県内すべての特別支援学校の児童生徒は、地域の小中学校に副次的な学籍「交流籍」を置く。「特別支援学校の子が、地域とのつながりを保つ制度。将来、地域で生活することにつながる」と県教育委員会特別支援教育課は、狙いを説明する。学校に行って直接交流するか、間接交流にするかは、本人や保護者が選ぶ。

 県によると、昨年度、直接交流をしたのは、小学部で65%、中学部で35%。学年が上がるほど、学びが高度になり、授業の進み具合を合わせるのが難しくなることや、学ぶべき内容が多く時間の確保が難しくなることが、中学で直接交流が進みにくい要因という。

 (佐橋大)

 

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