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教育

<二つめの学舎 副次的な学籍>(上) 地元の仲間と共に成長

2人の研究協力員に付き添われて、学級活動に参加する藤居夕葵さん(左から2人目)=滋賀県長浜市の朝日小学校で(一部画像処理)

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 特別支援学校に在籍しながら、自宅近くの小中学校にも「副次的な学籍」を持ち、そこでも学ぶ児童、生徒が増えている。自治体が制度化を進め、特別支援学校の子には普段と違う環境で過ごす教育効果、小中学校の子どもには障害への理解が進むことを期待している。現場の今を2回で伝える。

   ◇

 九月中旬、滋賀県長浜市の朝日小学校。五年生の教室には、普段、特別支援学校の長浜養護学校(長浜市)で学ぶ藤居夕葵(ゆき)さん(11)の姿があった。四年生の途中から、月一、二回、朝日小で学んでいる。

 姿勢を保つのが難しい夕葵さんのための肘掛け付きのいすと、体に合った小さめの机。これらは、夕葵さんの通わない日も教室にある。学級名簿にも、夕葵さんの名前がある。「お客さんでなく仲間」と意識させる工夫がされている。

 夕葵さんは、言葉を話せない。言語や運動の機能が低下する神経の病気「レット症候群」を患っているためだ。一歳ごろは「パパ」「ママ」と言っていたが、次第に話さなくなった。食事には介助、歩くのにも付き添いが必要だ。意思の疎通も難しい。

 最初、両親は迷いながら夕葵さんを地元の朝日小に入学させた。保育園での友達と一緒に学んでほしいと思ったからだ。父親の貴之さん(38)は「保育園の先生は、夕葵と難しいなりにコミュニケーションを取ってくれた。娘は笑うようにもなった」と振り返る。涙を流すなど夕葵さんなりの意思表示もするようになった。

 友達は小学校でも、夕葵さんを特別視せず接してくれた。ただ、学年が上がるにつれ、夕葵さんのできないことが増えていった。貴之さんは「この子の力を伸ばすため、個別にきめ細かく対応してもらう環境も必要」と、四年生で長浜養護学校に転籍させた。一方で、地元の子と一緒に学ぶ機会も欲しいと、県が昨年度から試行を始めた「副次的な学籍」を地元の小中学校にも置く事業に協力し、朝日小でも学ぶようになった。

 取材の日、夕葵さんは体調がすぐれず、三時間目と五時間目の運動会の練習は教室から見学した。一時間目は、特別支援学校で普段するように、運動能力を高める個別の機能訓練「自立活動」をし、二時間目と四時間目の英語と学級活動に加わった。学級活動は野外学習の事前学習で、研究協力員と呼ばれ、介助もするスタッフ二人に付き添われ、皆と同じように、しおりに目を通した。

 スタッフの費用は、県が負担している。トイレに夕葵さんを誘導したり、食事の介助をしたり、他の子との間を取り持ったり。制度を検討する段階のため、夕葵さんや周囲の関わりをよく観察し、詳細な記録を付けるのも、その役割だ。

 夕葵さんは音楽が好き。朝日小では多くの子が合唱する中で過ごすなど、特別支援学校ではできない経験を積んでいる。朝日小の同級生は昨年度、夕葵さんを交えてドッジボールをする際、「夕葵さんが当てられないよう、みんなで守る」「夕葵さんにボールを触れさせてから投げる」といったルールを自分たちで決めた。貴之さんは「夕葵は、いろいろな経験をして、生きていく力を付けてほしい」と期待を寄せる。

 同県が副次的な学籍の導入を検討しているのは、障害にかかわらず共に育つという意識を、子どもも周囲もはっきりと持つようになるのを期待してのことだ。

 こうした制度を本格実施している長野県や岐阜県では、これまでにない効果や共に学ぶ形が生まれている。

 (佐橋大)

 (次回は8日)

 

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