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ESD実践校が増加 地域の課題、自ら考え行動

避難経路について意見を出し合う生徒たち=愛知県豊橋市の前芝中で(同校提供)

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 三日、愛知県豊橋市の前芝中学校の生徒は、地元の自治会、小学校などと合同で防災訓練をした。午前八時、震度6強の地震が発生した想定。生徒たちは、住民とともに町内各地に集合し、高台に避難した後、地域全体の避難所である中学校を目指した。訓練には、三月に生徒たちが交わした議論が生かされていた。

 前芝中は三年前から、自治会などと合同で防災訓練をしている。中学生はESD教育の一環として、調べ学習をしたり、専門家に話を聴いたりして訓練前に、災害時の救護法などを学ぶ。訓練のときには、住民向けの啓発、体験ブースを開いている。

 昨年度は、さらに、三月の総合的な学習の時間を使い、訓練を振り返った。地区ごとに生徒が集まり、訓練で感じた避難の課題を挙げた。「避難経路はブロック塀が多く危険」「高台の避難場所をもっと高い所に」などの意見を出し合い、地図に貼り付けた。話し合いの結果は、代表の生徒から地域の自治会に伝えられた。三日の避難訓練では、その内容が住民に伝えられる場面も。前芝校区自治会の北河義彦会長(66)は「生徒たちからの改善点の指摘は、ありがたい。住民が防災を真剣に考えるきっかけになった」と話す。

 前芝中の谷中緑校長は「校区は海に面していて、大地震の時には津波への対策も必要」とし、ESDについて「持続可能な社会の担い手を育むということは、生徒が地域に愛着を持ち、防災について学ぶ中で地域に役立つ存在と自覚し、行動できるようになること」と説明する。

 成果の芽は出つつある。八月、校区内で竜巻が発生し被害が出た翌日には、学校から保護者にメールで連絡が入ると、生徒たちが集まり、飛ばされた屋根瓦などの後片付けをした。

      ◇

 豊橋市では二年前、市内すべての小中学校七十四校がESDの推進拠点である「ユネスコスクール」に認定された。市内の各校は、地元の川の環境を調べ美化活動をしたり、外国籍の児童の多い地域では、国際理解を進める活動をしたり、それぞれに特色のある学校づくりをしてきた。そうした活動を基にESDに取り組む学校が多い。学校間の取り組みに差はあるというが、「まずは意識することが大切。課題解決に向けて自分たちで考える活動は、子どもたちが社会で生きていく力に結び付く」と、同市教育委員会教育政策課の前田近子指導主事。現在の学習指導要領も、教育の目標に「児童、生徒の生きる力を育む」と掲げている。

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 ユネスコスクールは、現在、国内に千三十七校。約七割が小中学校だが、高校、大学、幼稚園の参加も。認定をする日本ユネスコ国内委員会(東京)は、東日本大震災の被災地の中学と交流したり、「中学生として防災のためにできること」を考える愛知県岡崎市の竜南中学校などの取り組みを啓発冊子で具体例として挙げている=表。委員会事務局によると、最近は、理科や国語などでも取り組む例が増えているという。    

 「持続可能な開発のための教育(ESD)」を実践する学校が増えている。環境、防災、平和など、地球規模の課題を自分たちの問題と捉え、解決策を考える教育だ。従来の環境学習、防災学習などと違って、知識の習得にとどまらないのが特徴。「自ら考え、行動する人を育む」との狙いが、最近の教育の目指す方向と合っていることも、採用校が増えている要因と考えられている。

 (佐橋大)

 <ESD> Education for Sustainable Development(持続可能な開発のための教育)の略。人類を脅かす地球規模での課題の解決を、教育を通じて図ろうと、日本が2002年に提唱した。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が中心となり、世界で普及を図っている。

 

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