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タフな交流に成長手応え 「内向き」じゃない国際学生会議

「貧困の女性化」について話し合うチーム=東京都渋谷区で

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 さまざまな国の学生が真夏の9日間、寝食を共にしながら国際問題を話し合う会議がある。今年で63回目の「国際学生会議」(日本国際学生協会が主催)には、過去最多の19カ国から約60人が東京都内に集まった。「内向き」とされる日本の大学生が、「自分を成長させたい」と懸命に交流する姿を追った。

 この会議は満州事変直後の一九三四年、日米関係の悪化を懸念した日本の学生が始めたという。今年は「多様性の中からの発見」という大きなテーマを掲げ、八月二十日に本会議がスタート。参加者は五チームに分かれ「気候変動」「資本主義の再考」「トランプ大統領時代の国際関係」などについて終日英語で議論。各チームの約半数が海外の参加者だ。

 「ブラジルでは十一分に一人レイプされる」「母も祖母もシングルマザー。母は出稼ぎしながら私を育ててくれた」「スラム街の出身。学校に行くために必死で働いた」…。「貧困の女性化」を話し合うチームはフィリピンやモンゴルなど六カ国から十人の男女が参加。初日からメンバーが体験談や母国の状況を語り、重苦しい雰囲気になった。

 「圧倒されて、意見が言えない」。会議の前半にそう話したのは、愛知淑徳大三年の倉野愛弓さん(20)=愛知県小牧市。勉強してきた社会福祉について考えの幅を広げたいと参加したが「日本では想像もできない世界の現状。私が勉強してきたことはほんの一部で、伝えたいことを英語で話せないのも、もどかしい」。

議論の合間にゲームなどで交流し、盛り上がる参加者=東京都渋谷区で

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 日本とブラジルを比べ、みんなで原因をあぶり出し解決策を探った。お風呂の後、深夜まで話し合った日も。女性や子どもへの支援制度が話題に出た時、倉野さんは「日本では支援が必要な人に情報が伝わっていない」と発言し、議論を深めるきっかけをつくれた。「言いたいことが言えて、やっと楽しめた」と笑顔に。

 そのころ、「機械と人間の共存」を話し合うチームのリーダー、京都大二年の新美貴仁さん(20)=愛知県知立市出身=は、深刻な表情で黙り込んでいた。

 初めは交通分野の技術をみんなで調べ、順調に議論を進めていたが、中間発表後に「もっとロボットや人工知能と人との関係を考えたい」との提案が出て、方向性がぐらついた。「参加者の背景や文化の差もあり、共通点を探って導くのは難しい」

 二十七日の成果発表会。新美さんらはその後深めた議論を基に、歩行を補うロボットスーツや未来の超高速移動の可能性を紹介。「貧富にかかわらず、すべての人が使える技術を追い求めていくべきだ」と語り、大きな拍手を受けた。

 留学経験もなく不安だったという新美さん。「リーダーシップが足りないと痛感したし、英語をしっかり勉強して海外に行きたいと思えた。自分が本当に伝えたいことは何か、こんなに考えさせられた夏はない」

 今年の実行委員長で、東京大二年の松本滉司さん(21)は「みんな壁にぶつかったけれど、何かを得ようと頑張った」と見る。初参加した昨年は自身も英語力のなさや未熟さに苦しんだ。「異文化にどっぷり漬かり、仲良くしていくタフさを養う機会。海外参加者は優秀な人が多く、世界に挑戦したいとも思えた」。この秋から北京大へ留学する。

 倉野さんは「内向きといわれる日本の学生も、海外に興味のある人は多い。私も伝える勇気を持つことで成長できた。ぜひ一歩踏み出してほしい」と話した。

 九月十三日午後二時から、名古屋市千種区のホテルレオパレス名古屋でも報告会が開かれる。無料。

 (芦原千晶)

 

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