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教育

<今、考える道徳>(下) 一人一人の成長を記録

道徳の時間の締めくくりに、感じたことや考えたことを「振り返りカード」に書く子どもたち=愛知県春日井市の坂下小で

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 道徳は小学校で二〇一八年度から、中学校では一九年度から「特別の教科」になる。通常の「教科」とされなかったのは、数値で評価をしないからだ。子どもたち一人一人の成長を把握し、文章で評価する。現場は手探りだ。

 五月下旬、愛知教育大付属名古屋小学校で、愛知県内外の教員が授業の様子を見学し、議論する「教育研究発表協議会」が開かれた。道徳の授業は二つあり、いずれも廊下が見学者で埋まるほど注目を集めた。授業後の発表協議会では、県内の公立小の教員から「今、一番ホットな関心事」として「評価をどうしていくのか」という質問が出た。

 道徳の評価は、「総合的な学習の時間の記録」のように文章で通知表に記される。

 「他の子と比べた評価ではなく、一人一人が授業を通じて、どう成長したのかを記録する。成長を認め、励ます『積極的評価』をする」と文部科学省の担当者は説明する。評価は、受験校に出す調査書には載らず、「受験校側も提出を求めてはいけない。推薦入試も含めて、入試を左右するものにはならない」という。

 さらに、「個別の項目についての評価はしない。例えば『愛国心』を評価するということはありえない。一面的な見方から、多面的、多角的な見方に発展したか、考えが深まったかといった点を、具体的な状況とともに記す」とも。同省は、評価を含めた教科化に向けた解説を近く示すという。

 「どう評価するにしても、子どもたち一人一人の状況を正しく把握することが大事」と愛知県教育委員会義務教育課。一部の学校では、文章での評価を見据えて準備が進んでいる。

 愛知県から昨年度、道徳教育の研究推進校を委嘱された同県春日井市の坂下小学校は、子どもたちが授業で何を感じたかを記すA4判一枚の「道徳振り返りカード」を導入。授業の最後の七分を、記入の時間に充てている。授業後、カードは回収し、教師が一言書き添えて返す。

 カードを通じて、子どもたちの授業での心の動きをこれまでより詳しく把握できるという。「子どもたちが自分を見つめ直し、成長を確認する機会でもある」と同校。一人ずつ準備したファイルにカードをまとめていくので、一年たてば、それぞれの子の考え方、感じ方の変化をたどれる。教師にとっては毎時間の児童の反応が分かり、励みになる。授業の改善にも生かせる。

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 これとは別に、二学期から学期末に、学期単位で道徳の時間を振り返る「授業振り返りシート」も子どもたちに記入させた。教師は、授業での発言、毎時間のカード、振り返りシートから子どもたちの成長を読み取り、メッセージを書き、子どもたちに返した。「すばらしい。学習したことが生活に生かされていますね。困っている友達を優しく助けてあげることができました」とか「友達の発表を聞いて、『なるほど』と考えられるのは、すばらしい」といった内容だ。通知表に記す評価とは別だが、教師たちは「子どもたち一人一人に向き合い、成長を感じて伝えることは通知表の評価にも通じる」と意識して取り組んだ。

 「具体的な記述で、子どもたちをしっかり見ているというメッセージを込めたい」という思いと、「『誠実』『思いやり』といった項目別の評価をしない」という制約。両立させるにはどうしたらいいか、教員たちは多忙の中で頭を悩ませる。

◆戦前は「甲乙丙」で評価

 戦前の学校では、道徳教育を行う「修身」が重要な教科とされ、他の教科と同様に「甲乙丙」で評価もされていた。

 戦後、連合国軍総司令部(GHQ)は、軍国主義的だとして、修身の廃止を命令。その後、1958年の教育課程の改訂で、小中学校で、週1時間の「道徳の時間」が設けられ、道徳を扱う授業が再開されたが、評価は復活しなかった。

 道徳の教科化の議論でも「多様な価値観を数値などで評価することは不適切」との考えから、記述式による評価方法に落ち着いた。

 一般の教科を中学以上で教えるには専門の免許が必要だが、道徳は専門の免許を設けず、原則担任が指導する。道徳は、教科書を使う教科ではあるが、評価や教員免許で扱いが異なるため「特別の教科」となった。

 (佐橋大)

 

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