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教育

<今、考える道徳>(中) 多様な意見拾い上げる

道徳の授業について意見を交わす教員ら=愛知県岡崎市の竜美丘小で

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 二〇一八年度から順次、小中学校で進められる道徳の教科化に伴い文部科学省が打ち出した「考え、議論する道徳」。限られた時間で、さまざまな意見を拾い上げ、子どもたちに、いかに深く考えさせるか。教育現場では、模索が続いている。

 「ざわついたところで、意見を拾えば良かったのでは」。五月中旬、愛知県岡崎市の竜美丘小学校で、道徳の研究授業の後、見学した教員が授業の進め方について意見を交わした。

 この日は、藤田茜教諭が教材「移動教室の夜」で、五年生に授業をした。

 泊まりがけの校外活動で、寝床でおしゃべりをして夜更かしをする女子三人。消灯後に先生に注意され、三人のうちの一人、千葉さんが「気分が悪いから先に寝たい」と訴えたのに、他の二人は話し続けた。翌朝、千葉さんは体調不良で倒れる。「善悪の判断、自由と責任」について理解を深めるのが狙いだ。

 「二人はどうすれば良かったのかな?」と問う藤田教諭に、男子児童が「布団に潜って声が漏れないように話せば良かった」と答えた。教室がざわついた。

 藤田教諭は、その直後に別の児童から出た「先生に注意されたときにやめれば良かった」という答えに反応。「注意されたらやめるので、いいのかな?」と切り返し、「結果を予測して、責任を持って行動する」という方向に考えを深めさせる授業を展開した。

 協議会では、授業の進行が適切だったと評価されたが、「ざわつきのところで、切り返せばさらに話が深まった」「布団に潜って話をする考えを否定したくない。なぜ、そう考えたのかを問い掛ける。それで、ああ、なるほどと思う子がいるかもしれない」などの意見も教員から出された。できるだけさまざまな意見を拾い上げたいという意識がうかがえた。

 「考え、議論する道徳」の授業で重視するのは、意見の多様性に気付くこと。一つの考えを教え込むのではなく、いろいろな考えを知り、納得する答えを見つけるというプロセスを大切にしているからだ。同時に、議論を散漫にさせず、考えたいテーマについて考えを深めさせる力量も、教員に求められている。

 一昨年度から岡崎市に委嘱され道徳の研究校を務める竜美丘小学校では、昨年度、同様の研究授業を十回以上開催。知恵を出し合い、発問や板書の改善に生かしている。発問では「自分ならどうするか」を考えるように促し、板書も、考えの流れが分かるように工夫しているという。

 一方、道徳の指導は、学校や教員による格差が大きいとされる。道徳の教科化に向けた中央教育審議会の一四年の答申でも、それが指摘された。文科省が一二年に全国の公立小中学校を対象にした調査で、道徳教育の課題を複数回答で聞いたところ、「効果的な指導法が分からない」が小学校で33%、中学校で39%あった。良いとされてきた道徳の授業法が大きく変わることで、戸惑いを感じる教員もいるという。

 愛知県道徳教育推進会議の議長でもある土屋武志・愛知教育大教授は「多くの意見を拾い、時間内にまとめるのは簡単ではないが、うまくできれば、子どもたちは面白さを感じられる。教員同士で授業を見合うことで、授業法は改善できる。ただ、どの学校も余裕がなく、思うように研究の機会を持てない」と指摘する。

◆教科化 教員7割「反対」15年調査

 道徳の教科化に対し、教育現場では反対意見が多いとの調査結果もある。

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 愛知教育大、北海道教育大、東京学芸大、大阪教育大が2015年8、9月に、全国の公立小中学校、高校の教員に教育改革の賛否を問う調査をした。5373人が回答(有効回答率55.3%)。道徳の教科化に「賛成」「どちらかといえば賛成」は小学校で18.8%、中学校で21.3%。「反対」「どちらかといえば反対」が小学校で78.9%、中学校で75.9%を占めた。懸念が強かった「数値評価」は行わないとの方針も出た段階だ。同じように聞いた「アクティブ・ラーニング」では「賛成」「どちらかといえば賛成」が小学校で93.2%、中学校で90.7%。それに比べると、低い数字だ。

 愛知教育大教授として調査の研究代表を務めた子安潤・中部大現代教育学部教授は「現場の教員の話を聞くと、教科化で導入される評価への不安がある。安易に評価していいかという懸念と、負担感。加えて、授業改善に手間をかけても、短い時間の議論で、子どもたちの力がつくのかという疑問も強いと感じている」と指摘する。

 (佐橋大)

 

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