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教育

「自分ならどうする?」 道徳の教科書、議論促す構成に

友達について考えさせる1年生の教科書。答えの例を示し、意見が出やすくなる工夫も

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 来年四月から教科になる小学校の道徳。授業で使う教科書の検定結果が三月に公表され、合格した八社の教科書を読んでみた。自分ならどう行動するかを考え議論する授業になるようにという意図と、情報モラルの理解を深めることの二点が、大きな特徴だ。 

 「児童が『どうしたらいいか』を考え、話し合う時間を長く取れるよう工夫した」。ある出版社は説明する。

 例えば、一年生向けの読み物「いっしょにかえろう」。主人公が仲良くなった子に「一緒に帰ろう」と誘う。相手の子から「もちろん、いつも一緒だよ」と返事をされ、うれしくなった、という明快な話だ。今使われている副読本にも同様の設定の読み物があるが、結論が異なる。相手の子は「他の子と帰る」と言い、「わたしのこころは『いっしょにかえろう』といっています」という主人公の気持ちで結ばれている。

 出版社は、副読本の記述では一年生が自分のこととして読み取るのは難しいと考え、内容を見直した。

 これまでの道徳では「この時、主人公は、どう感じたのでしょう?」と教師が子どもたちにしばしば問い掛ける。登場人物の心情理解に時間がかかり過ぎ、「自分ならどうするかを考え、議論する時間」が十分確保できていないと、教育関係者からの批判があった。

 文部科学省は教科化に伴い、「考え、議論する道徳」への転換を掲げた。

 別の教科書会社では、読み物の結論をあえて書かないようにして、「意地悪をしている子に何と言うか」を考えさせたり、文章や挿絵の表現を簡素にして、子どもたちが考える余地を大きくしたりした。

 発展的に考える際の参考情報も示した。子どもたちが、主体的、対話的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」を想定した構成だ。

 いずれの教科書も、読み物をただ示すのでなく、「話し合ってみよう」「あなたならどうしますか」など児童に問い掛け、考えることを促す構成が目立つ。議論が偏らないように、脚注で多様な見方や着眼点を示した読み物も。「道徳の授業が苦手な先生も、授業を進めやすいように工夫した」との声は複数の出版社から聞かれた。

 インターネット社会での「情報モラル」の扱いが増えたのも、新しい教科書の特徴。教育内容の指針となる学習指導要領は、情報モラルの「指導に留意」となっていたのが、教科化に伴い「指導を充実」に改められた。

情報モラルを扱う教科書

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 ある出版社は、六年生の教科書で、スマートフォンで撮った写真のネットへの投稿を漫画で取り上げた。

 遊びに行った時の集合写真を投稿した女性が、友人から「勝手に投稿するなんてひどい」と怒られる。そこから、肖像権やプライバシーといった情報モラルに欠かせない概念を理解する流れの教材にした。

 別の出版社は、主人公の男子がメールを送ろうとしたとき「相手が悲しくなる使い方はだめ。自分だったらどう思うか、よく考えてから使って」と母親と約束したことを思い出し、メールを書き直したという話を二年の教科書に載せた。

 誤った情報をネットの掲示板に書き込み、その結果、混乱が生じたという話から、情報を発信する責任を考えさせる教科書もある。

 メールや会員制交流サイト(SNS)のやりとりで「かわいいよね」の意味で「かわいくない?」と書いたつもりが「?」を付けずに送信し、相手を怒らせたトラブルや、ネットの情報をうのみにしたり、著作権のある写真や文章を安易に引用したりすることの問題点に気付かせる内容も多くの教科書が扱っている。

◆小学校は2018年教科化 評価は記述式で

 現在、小中学校では週1時間、年間35時間(小1は34時間)、道徳の授業がある。正式な教科でなく「教科外活動」とされている。教科化されると、検定を受けた教科書を使う。文科省の担当者は「学校の工夫で、さまざまな教材も使える」と説明する。

 評価は記述式で行い、中学校では専任の教員でなくても教えることができる「特別の教科」と位置づけられた。中学校の教科化は小学校より1年遅く2019年から始まる。

 教科への格上げの議論は、11年に大津市で起きた中学生のいじめ自殺から本格化した。13年に、政府の教育再生実行会議が、いじめ対策として小中学校での道徳を教科にするよう提言。14年に中央教育審議会が、「特別の教科」にするよう答申した。

 今年3月に文科省が教科書の検定結果を公表した際、「国や郷土を愛する態度が不十分」との同省の意見を受け、教科書会社が、パン屋を和菓子屋に書き換えたことが話題になった。

 (佐橋大)

 

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