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教育

地域担う若者、育てます 地方国立大の新戦略

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 地方国立大が地域を支える人材育成に活路を見いだしている。近隣の他大学と共存を図ったり、新学部を設けたりして、特色ある教育で魅力を高める動きも進む。都市部に流れる若者を引き留める存在感を生み出せるか。

 買い物客が行き交うJR福井駅前。近くの商業ビル七階にある大学連携センター「Fスクエア」で、県内の五大学による単位互換授業が行われていた。

 「次回は討論なので、各自で同じような事例を考えてきてください」。元マダガスカル大使で、福井大国際地域学部の細谷龍平教授が学生に呼びかけた。「国際社会と外交」の授業。細谷教授は日本生まれのテリヤキバーガーを例に挙げ、一つの商品が地域と世界を循環する間に徐々に標準化される様子を解説した。福井工業大二年の男子学生(19)は「他の大学の授業を他大学の学生と学べる上に、視野が広がる」と話す。

 授業は昨年四月に開始。福井大が、大学を拠点に地方創生を進める文部科学省の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+=センター・オブ・コミュニティー・プラス)」に採択され、事業の責任校として、県内のすべての四年制大で取り組む。国公私立の枠を超えて団結し、県外への大学進学者の流出を防ぎ、地域を支える人材を育てる狙い。

 卒業後も地元に定着するよう、五大学で新たな資格制度も設けた。福井の魅力を学ぶ科目を履修し、地元企業でインターンシップ(就業体験)を終えた学生を、三年の終わりに「ふくい地域創生士」として認定する。県内での就職活動で有利に働くよう、地元の自治体や経済団体に理解を求めている。

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 いずれの大学も規模は小さいが、原子力技術や生物資源、ものづくり、看護福祉など、個性的で最先端の研究もある。「将来的に研究の相互補完が進めば、地域に対して大規模な総合大学のような役割を担える。地域も活性化する」と福井大の岩井善郎副学長。まもなく研究者レベルでの交流も動きだすという。

 少子化時代の生き残りをかけ改革を余儀なくされている高等教育機関。二〇〇四年の法人化後、財政基盤となる運営費交付金が削減され続けてきた国立大はなおさらだ。加えて文科省は一六年度から、八十六の国立大を「地域貢献」「特色ある分野の教育研究」「世界で卓越した教育研究」の三類型に分類。運営費交付金の1%にあたる百億円を内容に応じて重点配分し、大学に焦点を絞った改革を促す。

 「地域貢献」型は福井大含め五十五大学。このうち三重大は新たに学則に「地域に根差す」の文言を加え、資格も創設。岐阜大も愛知県の私大と資格を設け、愛知に進学した学生が就職時に岐阜県内に戻ってくる仕組みをつくるなど、ユニークなCOC+に取り組んでいる。

 地域研究の学部をつくる大学が多い中、独自色を打ち出すのは滋賀大。四月、世界的に需要の高まるビッグデータを扱う「データサイエンス学部」を開設する。日本初の統計系の学部で、ビッグデータに新しい価値を生み出す「データサイエンティスト」を養成する。学部長に就任する竹村彰通教授は「地方創生の研究で社会のお手伝いもしていきたい」と話す。

 (美細津仁志)

◆今こそ力を生かす必要

山本健慈さん

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 国立大学協会専務理事で和歌山大学長も務めた山本健慈さん(68)の話 一九四九年、「一府県一大学」を原則に全国で国立大がつくられ、地域社会の発展の核となることが期待された。だが国立大は長い間、地域の期待に応えることはなかった。大学の中にだけ目を向け、研究や学生の教育に取り組んでさえいれば良かったからだ。

 だが、少子高齢化や東京への一極集中により地域が疲弊する中、再生に向けて頑張る地域や人々を目の当たりにして、地域の一員である大学も組織として自発的に地域に目を向けるようになった。進むべき大学の方向性に「地域貢献」を掲げる地方国立大は地域と真剣に向き合い、大学の持つ力を「地方創生」に生かす必要がある。

 成果主義と競争原理が持ち込まれ、厳しい財政運営が続いているが、社会が支える大学であることに変わりはない。いわば地域の財産だ。地域で国公私立の大学のあり方をトータルで考え、新しい国立大をつくる時期に来ている。

 

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