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教育

<多忙な先生> 事務的な業務、負担重く

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 「絶対に間違えないように…」。通知表を前に、愛知県一宮市の中学校に勤務する三十代男性教諭の手が汗ばんだ。午後八時。勤務の終了時間はとっくに過ぎた。周りを見ると、職員室にはほかにも、通知表を書くために残る先生がいる。学校生活の様子を書き込む所見欄に、一字一句丁寧に手書きする。明日の授業の準備も終わってない。「せめてパソコンで書ければ」。毎回のようにそう思う。

 昨年十一月、愛知県教育委員会が県内小中学校(名古屋市を除く)の教員を対象に勤務時間外の在校時間を調査。一宮市の小学校は、31%が八十時間超と回答し、県内ワーストを記録した。中学校もおよそ六割が八十時間を超え、そのうち四割は、百時間を超えていた。

 一宮市教職員労働組合がアンケートを取ったところ、長時間労働の原因の一つに「通知表の手書き」が挙げられた。合併した旧尾西市や木曽川町など一部の学校を除き、ほとんどの学校で「温かみのあるメッセージを届けたい」と所見欄を手書きする。一部は電子化されているものの、負担は大きい。男性教諭は「パソコンだから心がこもってない、ということはないはず。書いてある内容こそ大事だと思うのだが」とため息をつく。二学期も終盤。まもなく通知表をつける時期がやってくる。

 同じ愛知県内の春日井市。全国に先駆けて、十七年前から校内の情報を電子化する「校務の情報化」を進めてきた。通知表もその一つ。以前は、出欠日数や成績を下書きから書き写すときに誤りがないよう、細心の注意を払った。今はデータ管理が一元化されたので、一度正確に入力すれば、同じ内容を何度も転記する必要がなくなった。所見欄もパソコンで書く。

 成績処理だけではない。教職員間の簡単な連絡事項は、個人のパソコンにある連絡掲示板を活用する。「『○○委員はこの時間に職員室に来てください』など読めば分かる連絡も多い」と出川小の水谷年孝校長が明かす。毎日あった打ち合わせを週二回に削減。週に四十五分の時間を捻出した。「大規模校だと、打ち合わせのために全員が集まるだけでも時間がかかる」と水谷校長。「空いた時間は、子どもと向き合うために使えるようになった」

 並行して市教育委員会の改革も進んだ。国や県からは通知や調査依頼が、一日二十通も来ることがある。例年同じような調査も多いが、膨大な資料から過去のデータが見つからず、もう一度学校に調査をお願いすることも。文書が電子化されたことで、過去にどんな調査があったかが検索できるようになった。児童生徒の人数、教員の定数、退職者数、講師の人数など、教育委員会で答えられる調査を精査し、業務も見直した。

 市学校教育課の前川健治指導主事は「多忙そのものを解消するのは難しいが、意味のない忙しさを減らすことはできる。そのために改善できることは改善したい」と話す。

◆校務支援システム整備へ 作業を効率化

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 先生は、何に負担を感じているのか。文部科学省は二〇一四年、公立小中学校四百五十一校を調査。教諭の約九割が「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」と回答し、ほか「参加した研修会の報告書作成」「子、親向けアンケートの集計」など事務的な業務が上位にあがった。

 作業の効率化に期待されるのが、春日井市でも導入されている「統合型校務支援システム」だ。成績処理や出欠管理、健康診断票、指導要録など学校事務の情報を電子化したシステムで、全国の整備率は約四割。文科省は四年以内に全学校に配備する方針だ。

 一方で、「システムの導入が新たな負担にならないか」という声もある。システムの開発とサポートをするメーカー「EDUCOM」(春日井市)営業部の松本賢治部長は、使う機能を段階的に増やすことを勧める。春日井市では連絡掲示板、出席簿、成績処理と利用する範囲を順に広げ、全教職員が無理なく使えるようになった。「市内全校で同じシステムを使うので、異動しても動作は変わらない」

 文科省は今年六月、業務の適正化に向けた改革案を公表。システムの活用に触れつつ、国や教育委員会による調査内容や件数、方法についても見直すことを促している。

 (長田真由美)

 

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