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クルマ革命

<第9部> 事故死ゼロへ

オムロンが開発した、運転手の集中度を判定するシステム=東京都江東区の東京ビッグサイトで

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 ITなど技術の発展で激変する自動車産業と社会を描く「クルマ革命」。第九部は、交通事故を防ぐ新しい技術の未来と課題を探る。

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 国内外の大手自動車メーカーが最先端技術を競った今秋の東京モーターショー。電気自動車(EV)や自動運転のコンセプト車が並ぶ華やかな会場の一角で、健康機器を得意とするオムロン(京都市)が開発した「事故死者ゼロ」を目指す技術が来場者の熱い視線を集めていた。

 その名は「ドライバー見守り車載センサー」。運転手の目の動きや顔の向きを特殊な装置で感知し、人工知能(AI)で分析して運転手の集中度を判定する世界初のシステムだ。

 車の交通事故の原因は約九割が「人為的ミス」とされ脇見や居眠り運転の抑止が鍵となる。公益財団法人・交通事故総合分析センター(東京)の調査では、相手を死傷させた追突事故のうち八割以上は「発見の遅れ」や「判断の誤り」といった集中度の低下が要因だった。

 運輸業界で人手不足に伴う運転手の過労が原因となった重大事故が相次ぐ中、オムロンは新開発の技術を運送、バス会社に売り込もうとしている。運転手への警告に加え、集中度やドライブレコーダーの解析による危険運転の兆候を事業者にリポートで伝え、安全指導や勤務の改善に活用してもらうサービスを描く。来年四月から事業を開始し、将来は脈拍検知による体調管理の機能も加える。

 二十年以上前から顔認識システムの研究を続けてきた同社。広報担当の渥美昌之は「集中度の把握で事故の大幅減が期待できる。健康を含め、人の状態を把握する領域は得意分野だ」と意気込む。

 国内の交通事故死者はピークの一九七〇年を中心に年間一万六千人を上回った。昨年はその四分の一以下の三千九百四人。それでも計算上は、二時間余に一人が命を落としている。

 これまでの事故死減少は「事故は起きるもの」を前提にした安全基準の厳格化やシートベルト、エアバッグの普及によるところが大きかった。近年は事故そのものの発生を減らそうと、各メーカーが自動ブレーキと、アクセル・ブレーキの踏み間違え防止装置の標準装備化を進める。これらの装置で、追突事故が九割減るとの試算もある。

 将来、普及する自動運転では、車同士が互いに通信して「ぶつからないクルマ」が現実のものとなる。かつては夢物語だった「事故死者ゼロ」。それが現実的な目標になりつつある。

 (敬称略)

 

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