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クルマ革命

地方から進む自動運転

島民を乗せ、自動運転で走行するバス=沖縄県石垣市で

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 道端のハイビスカスが鮮やかな沖縄・石垣島。「自動運転モードで出発します」。島民の乗るバスが、のどかなサトウキビ畑を横目に走る。補助役として運転席に座る運転手は緊張した面持ちで自動運転システムのハンドルさばきやアクセルの加減を見守っている。

 六月末、路線バスの自動化の可能性を探る内閣府が島の片道十六キロのコースで二週間の実証実験をした。安全のため、ブレーキは人が操作し、コンピューターに記憶させたルートを走る。トラクターを追い抜く際、手動運転への切り替えに手間取り、後続車が渋滞するなど課題も目立った。

 それでも、現地入りした沖縄北方担当相(当時)の鶴保(つるほ)庸介は「交通量の多い環境下での一般試乗は初の試み」と意義を強調し、「バスの運転手不足に寄与する」と意欲を示した。

 人口四万七千人の石垣島は、四年前の新空港の開港で空前の観光特需に沸く。昨年は開港前年の一・七倍に当たる百二十四万人(竹富町・与那国町含む)の観光客が訪れた。土産物店や薬局には中国、台湾の団体客の姿が目立つ。

 地元のバス会社「東運輸」社長の松原栄松(えいしょう)(63)は、ツアーを歓迎する一方で「将来、路線バスを縮小せざるを得ないかも」と打ち明ける。運転手は平均五十歳前後。赤字路線は国などの補助金で維持してきたが、「努力しても運転手が集まらない」と漏らす。

 島には高校が三つあり、毎年五百人ほど卒業するが、多くは進学や就職で島を離れ、地元に残るのは一割ほど。石垣市商工振興課の担当者は「子どもは多いが、給与水準が低く、若者が少ない。長寿で高齢化が深刻な地区も多い」と話す。

 過疎化に運転手不足が追い打ちをかけ、不採算の路線が減便や廃止に追い込まれる悪循環は、全国の地方に共通する課題だ。

 政府の二〇一五年度の調査では、名古屋市と那覇市の直線距離に当たる約千三百キロの路線バス区間(高速バス除く)が一年間で消えた。路線バス業者の七割で運転手が減り、三大都市を除く地方の九割近い業者が赤字との調査結果もある。

 一方、免許を返納した高齢者の足として、バスの需要は高まる。石垣市の元漁師、平得永益(ひらええいえき)(75)は「近所は車に乗れない年寄りばかり。病院、役所、買い物。バスがなきゃ困る」と訴えた。

 石垣島の実験にシステムを提供したソフトバンク子会社のSBドライブ(東京)は七月、電動小型バスを使い、東京都港区の芝公園で完全無人の技術を実演するなど開発を加速させる。

 同社は自動運転仕様に改造した車両とシステムの販売を始めており、二一年度の量産化を目指す。「人手不足と収益改善に対応できる」と話す社長の佐治友基(32)は、展望する。「いずれ新興国でも同じ問題が起きる。世界に貢献できるモデルを構築したい」 (敬称略)

 

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