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クルマ革命

「飛ぶ」「泳ぐ」未来そこに

飛ぶ車の開発に向けた試作機。プロペラを使い、滑走路なしで浮上できる性能を目指す=愛知県豊田市で(カーティベーター提供)

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 車が空を飛んだり、水上を走ったり−。そんなSF小説のような世界を実現させる技術の開発が活発になってきた。常識を打ち破る発想で挑む技術者たちが思い描くのは、今より自由で便利な車の未来像だ。

◆国内外で開発活発

 「世界の人を驚かせるには、飛行機を連想させるデザインではだめだ」

 今月上旬の週末、愛知県三河地方を拠点に空飛ぶ車を開発している有志団体「カーティベーター」のメンバーが、車両のデザインを話し合っていた。夢は二〇二〇年の東京五輪開会式で車を飛ばし、大観衆の前で聖火をともすことだ。

 「わくわくする車を形にしよう」。自動車会社でエンジニアをしている中村翼代表(33)が呼び掛け、一二年に活動を開始。自動車、航空関連の技術者や大学生など有志の輪は八十人まで広がり、週末、開発拠点の廃校やスポンサー企業の事務所で活動している。

 目指すのは、高速道路も走れ、滑走路を使わずに浮上して時速百キロで飛び回れる性能だ。モーターを動力に車輪で走り、ドローンのようにプロペラを回して飛ぶ。電気自動車(EV)と同様、走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しない。

 現在、実寸大と五分の一の二つの試作機で、無人の飛行試験を繰り返しているが、上空での安定と軽量化が当面の課題。企業回りなどでスポンサーを集め、今年五月にはトヨタ自動車グループ十五社が今後三年間で総額四千二百五十万円の支援を表明した。

 東京五輪の三年後の二三年の市販を目指すが、量産するには数十億円単位の資金が必要。実現への道のりは険しいが、メンバーは「次世代に楽しい車を残す」と意気込んでいる。

 飛ぶ車は、渋滞解消や災害時の支援などの役割が期待され、海外では将来をにらんで開発競争が始まっている。米配車大手ウーバー・テクノロジーズが四月に空飛ぶタクシーの計画を発表し、欧州の航空機大手エアバスは年内にも飛行試験を始める予定だ。ただ、安全確保など法整備は進んでおらず、実用化のハードルはまだまだ高い。

バンコクの大学の構内にある池を走行するFOMMの小型EV「コンセプトワン」=FOMM提供

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 「飛ぶ」より先を行くのが「泳ぐ」。昨年秋、バンコクでは水上を走る車のニュースが話題になった。EVベンチャーのFOMM(川崎市)が開発した小型の四人乗りEV「コンセプトワン」が、大学構内の池を走行してみせたのだ。

 FOMMは自動車会社のエンジニアだった鶴巻日出夫社長(55)が一三年に設立。その二年前に東日本大震災があり、「水に浮く車があれば助かった人もいる」と開発に踏み切った。

 日常的に水上を走るのではなく、洪水など緊急時を想定する。車体は樹脂製のバスタブのような構造で二十四時間程度は水の浸入が防げる。水かきの形のタイヤホイールを回し、人が歩く程度の速さで進む。

 タイでは水害のほか、交通渋滞も社会問題になっており、小型EVを推奨しているプラユット首相も昨年五月に試乗した。FOMMは来年夏ごろ、同国での生産と販売を始める予定。広報担当の佐藤俊さん(27)は「タイでは『映画みたい』『災害時に活躍しそう』と好評です」と話す。すでに東南アジアの他国や欧州から引き合いがあるという。

 (鈴木龍司)

◆飛ぶ車を開発する様子や、水に浮く車を動画で見ることができます

https://www.youtube.com/watch?v=x_yEUOAZP5M

 

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