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クルマ革命

「つながる車」IT勢が攻勢

仕事をしながら「アレクサ」を搭載した「エコー」にスケジュールの確認をするメモンさん=米コネティカット州で(東條仁史撮影)

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 ITの発展で激変する自動車産業と社会を描く企画「クルマ革命」。第四部は、車がインターネットにつながる近未来を探る。

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 「クッキーのレシピを教えて」

 米コネティカット州ノルウォーク。ITコンサルタントのファルハン・メモン(46)が、台所でネットにつながった円筒形の「スマートスピーカー」に話すと、女性の声で答えがすぐに返ってきた。

 「オーブンをセ氏一七五度に予熱し、バターにクリームと砂糖を混ぜて…」

 スピーカーは、米ネット通販大手アマゾン・コムの「エコー」。人工知能(AI)を使った音声認識機能「アレクサ」が搭載され、人が話し掛けて情報検索や指示ができる仕組みだ。

 ピザの注文や家電製品の操作も可能で、「生活を変える可能性は無限大」とメモンは言う。便利さと手頃な約百八十ドル(約二万円)の価格が受け、日本では未発売だが、全米で発売から二年半で一千万台を突破。全てのモノがネットにつながる「IoT時代」の新しい波だ。

 背景には、AI技術の進歩で音声識別能力が飛躍的に高まったことがある。IoTの世界では、タッチパネルを操る「指」が主流だが、性能が向上した「声」が次世代ビジネスの最右翼。その先頭を走るアマゾンは、アレクサを音声サービスの共通基盤(プラットフォーム)にすることで、IoT時代の覇権を狙う。

 自動車業界も無縁ではいられない。

 今年一月、米ラスベガスで開かれた家電見本市。約七百ほどのアレクサ搭載の製品の中に、米フォード・モーターが出展した車があった。家の中からエンジンやカーエアコンを操作したり、車内から車庫を開けたりできる技術を紹介。最高経営責任者(当時)のマーク・フィールズ(56)は「十年後には、車とつながる全ての機器から集めたデータが大きなビジネスになる」と強調した。

 音声操作は、脇見運転の危険が少なく、車との相性は抜群。コンサル会社ローランド・ベルガーの貝瀬斉(ひとし)(41)は「音声の基盤を勝ち取ったものが家の中から車の中まで、あらゆるデータを牛耳る」と予測する。

 自動車各社はIoT時代に対応するため、IT企業と連携し、走行データを活用した道路情報などのサービスを模索してきた。しかし、音声認識機能のようにIT企業が主導する仕組みの中に押し込められてしまう恐れがある。

 危機感を強めたトヨタ自動車は昨秋、先陣を切って自前のプラットフォーム構築を宣言。カーシェアや自動車保険など移動に関わるサービスの開発を急ぐが、車が発想の中心にある自動車メーカーが、生活全般の基盤を目指すIT勢を相手にするのは容易ではない。トヨタ社長の豊田章男(61)は言う。

 「(つながることで)車そのものも、未来の自動車産業も従来と全く違う世界になるかもしれない」

 (文中敬称略)

 

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