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クルマ革命

<第3部>番外編 EV開発先駆け 中島徳至さんに聞く

中島徳至さん

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 自動車産業は、電気自動車(EV)の開発が加速することで時代の転換点を迎える可能性がある。20年近く前に「岐阜発のEVベンチャー企業」として注目を浴びながら、事業化で挫折した経験を持つ元ゼロスポーツ社長の中島徳至さん(50)=東京都港区=は、新たな発想の大切さを痛感している一人だ。EV時代の自動車メーカーは「モノとサービスを組み合わせたビジネスを展開する必要がある」と説く。

◆製造業も「コト」視点で

 −日本でもEV開発が急ピッチだ。

 「日本は電池やモーターなど優れたEV技術があるのに生かせていなかった。官民で積み上げてきたエンジン車の成功体験がEVの発展を阻害していたと思う。トヨタ自動車は最近、力を入れ始めたが、本音では得意のハイブリッド車(HV)で世界を席巻したかったのではないか」

 「国の支援も不十分だった。EVの最大手に育った米テスラと私が創業したゼロスポーツは技術力では同等だったが、EVを育てる政府の意志には差があった。米政府がテスラに開発費として四百億円を融資したのに対し、日本の支援はガソリン車へのエコカー減税に重点があった」

 −これまで日本でEV推進の機運が生まれなかった理由は。

 「エンジン車とは別の物なのに同じ土俵で扱ってしまったためだ。EVの特性を理解していない大手メーカーはガソリン車と同じ航続距離にこだわり、電池の性能が足りないことばかりが強調され、マイナスのイメージが植え付けられてしまった。本来なら電池性能に合わせて走行距離が少ない環境での利用法を提案すべきだった。私が取り組んだ郵便局の集配車はその一例だった」

 −EVの普及がモノづくりに与える変化は。

 「従来の車の価値は製造が難しいエンジンそのものにある。モーターに置き換われば、車は家電製品と同じようにコモディティー(日用品)化する。自動車メーカーはよく『取引先の部品メーカーと一緒に歩む』と言うが、EV化で不要になる部品もあり、すべての部品メーカーと一緒に進めるわけではない。ちょっと心配なメッセージの出し方だ」

 −日本の製造業に必要なことは。

 「すべてのものがインターネットにつながる時代に、車は単体ではなく社会での位置付けを問われる。たとえば地域でお年寄りらの足になっているコミュニティーバスは赤字が多いが、それをコストの低い自動運転にして運行システムを含めて提供するとか。これからの製造業は、提供する側の『モノ』視点ではなく、社会から必要とされる仕組みを考案する『コト』視点が大切になる」

 (聞き手・宮本隆彦)

 <なかしま・とくし> 東京理科大大学院修了。OA機器営業を経て、94年自動車用品小売りのゼロスポーツ(岐阜県各務原市)設立。98年EV開発に着手し、02年販売開始。日本郵政グループへの集配車としての大量納入が不調となり、11年に事業譲渡。現在はITベンチャー「グローバル・モビリティ・サービス」(GMS)社長。車両のエンジン始動などを遠隔管理する技術を開発し、ローンが組めない人に車両をリースする事業をフィリピンなどで展開する。同県下呂市出身。

 

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