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クルマ革命

「相乗り」が変える社会

米ニューヨークでも「ウーバー」の利用者は増えており、運転手のダヘズスさんは「仕事は上々」とご機嫌=東條仁史撮影

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 自動運転やITの発展で変貌する自動車産業を描く企画「クルマ革命」。自動運転技術がもたらす衝撃の大きさを描いた第1部に続き、第2部は移動手段などを「共用」するシェアリングの現状と、その先の社会の変化を探る。

     ◇

 米ニューヨーク・マンハッタンの中心部。名物タクシー「イエローキャブ」が客待ちの長い列をつくるグランドセントラル駅前で、スマートフォンのアプリを使って米配車サービス大手「ウーバー・テクノロジーズ」の車を呼ぶ。五分後、ミゲル・ダヘズス(28)がマイカーでやって来た。

 一月にウーバーに登録し、ライドシェア(相乗り)サービスの運転手になった。「一日八時間働いて百五十ドルから二百ドルくらい。収入は安定しているよ」。イエローキャブからウーバーに仕事を切り替える人も多いという。

 ウーバーは、空いている乗り物や時間を他人と共用するビジネス「シェアリング」の先駆け。二〇〇九年に米サンフランシスコで創業したベンチャー企業だ。

 タクシーより割安で、多言語対応の専用アプリに出発地点と目的地を入力するだけで車が迎えに来る利便性の高さが受け、わずか八年で七十三カ国に普及。ダヘズスは本業だが、副業を含めたウーバー運転手は百五十万人以上で、世界最大の「タクシー会社」へと急成長した。

 ウーバーの普及によって渋滞が名物だった米ロサンゼルスの交通量は減った。同社試算によると、一カ月で地球約四十周分に当たる百五十八万キロの走行距離が削減できたという。ウーバージャパン社長の高橋正巳(35)は「『一家に一台』から車をシェアする生活様式へ、変化が始まっている」という。

 一方で一六年一月、ウーバーに顧客を奪われたサンフランシスコ最大手のタクシー会社が破産。現地では「ウーバーの最初の犠牲者」と報じられた。欧州ではタクシー業界が強く反発。タイ都市部では業界との摩擦で政府が営業停止命令を出す騒動も起きた。

 日本では、ウーバーのようなマイカーの相乗りサービスは原則禁止だが、その波は、じわじわと押し寄せる。米「リフト」、仏「ブラブラカー」などウーバーに続く企業が続々と誕生。IT戦略を提言する民間団体「新経済連盟」は、ライドシェアの世界市場が二〇年までに約三兆二千五百億円規模に倍増すると予測する。

 ネットビジネスに詳しい早稲田大学教授の根来(ねごろ)龍之(64)は断言する。「最初は不安でも、使ってみれば便利なのがシェアリング。都市部を中心に『所有から利用』への意識の変化は止められない」(文中敬称略)

 

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