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クルマ革命

<第1部>自動運転の衝撃(4) 消える部品に危機感

村上開明堂が開発中の電子ミラーの試作機。サイドミラーに取り付けたカメラの映像が、ミラーの左右に映し出される=静岡県藤枝市で

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 「たとえ車体からミラーがなくなっても、会社が生き残る道を模索する」

 バックミラー国内最大手の村上開明堂(静岡市)。開発部長の望月敏弘(54)は覚悟したように語る。売上高の大半がミラーで国内シェアの四割を握るが、「ミラーを生産していればよかった時代は終わりつつある」。危機感は、押し寄せる自動運転の波のせいだ。

 自動車大手や、ITの巨人グーグルが二〇二〇年ごろに実用化を目指す完全な自動運転技術は、車の姿を大きく変えてしまいそうだ。人の運転が不要なクルマからはハンドルやミラー、ペダルという基本部品が消える可能性がある。

 周囲を視認する車載カメラが、ミラーの代わりになる−。村上開明堂はそう予測し、ミラーとカメラモニターを合体させた「電子ミラー」の開発を急ぐ。第一弾を一八年度に市場に出すため、カメラ技術に強い専門メーカーとの共同開発にも乗り出した。

 「すぐにミラーが不要になるわけではない。カメラに置き換わるのには時間はかかる」。常務の奥野雅治(71)は望みをつなぐが、不安は消えない。

 インドなどの新興国では、固定電話の普及を通り越してスマートフォンの普及が一気に進んだ。先進国が歩んだ道筋を飛ばして最新技術が社会に浸透する「リープフロッグ(かえる跳び)」現象。もし車で同じことが起きれば、ミラーを含む車の変化は想像より早く進むかもしれない。

 危機感は「消えるかもしれないパーツ」のメーカーだけにとどまらない。

 今年一月、米デトロイトで開かれた北米国際自動車ショー。独フォルクスワーゲン(VW)が展示した自動運転の試作車が注目を浴びた。運転席や助手席のシートを逆向きにして後部座席と向かい合わせ、リビングのように使う。常識を超えた発想のクルマづくりが、もう始まっている。

運転席や助手席のシートが逆向きになるフォルクスワーゲン(VW)の試作車=米デトロイトで(岸本拓也撮影)

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 車載シート大手のトヨタ紡織(愛知県刈谷市)は、昨年四月、グーグルをはじめ、自動運転の技術開発が進む米シリコンバレーに事務所を設けた。自動運転車に適したシート開発のヒントを探るためだ。

 「世の中の変化が起きている場所に身を置いて変化を感じ、自らどうするか考えたい」と社長の石井克政(63)。「新たなシートの姿を提案できなければ、仕事が汎用(はんよう)品の下請けばかりになってしまう」

 一台の車を造るのに必要な部品は、約三万点。国内でその製造に全製造業の就労者数の一割強にあたる約百二十万人が携わる。完成車メーカーを頂点に系列の部品メーカーが層をなす産業のピラミッドが今、自動運転の衝撃に揺さぶられている。(敬称略)

 <日本の自動車産業> 車を造るには、エンジンやタイヤ、音響機器など幅広い部品が必要で自動車メーカーは数多くを外部調達している。2次、3次の下請け企業を含めると関係企業の数は膨大。経済産業省の調査では、トヨタだけで約3万社が関わっている。自動車産業の出荷額は全製造業の2割近い約53兆円。輸送業や給油所など関連産業を含めると、約530万人が就労している。

 

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