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クルマ革命

<第1部>自動運転の衝撃(2) 「つながる」に商機

スマートフォンのようにソフト更新の内容が表示されるテスラの新型車=名古屋市で

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 運転席に若い男性が座ると、車が女性のデジタル音声で話し掛けてきた。

 車「ご帰宅ですね。いつものコンビニに寄りますか?」

 男性「そうするか」

 車「到着予定時刻に合わせて部屋のエアコンをオンにします」

 男性「ありがとう」

 昨年十一月、トヨタ自動車が公開した「未来のクルマ」のイメージ映像の一こまだ。車は、街中で借りられるシェアリングカーという設定。乗車の際、男性自身の情報が詰まったスマートフォンと通信機能を持った車がインターネットでつながり、男性の行動や好みを把握した人工知能(AI)がコンシェルジュのようにサービスを提案する仕組みだ。

 あらゆるモノがネットに接続する「IoT(インターネット・オブ・シングス)」の波は、自動車業界にも押し寄せる。各メーカーは、「未来のクルマ」のようなサービスを将来、可能にする通信機能を車に載せ始めた。英調査会社IHSによると、二〇二二年には世界で販売される新車の94%に搭載されるという。

 通信機能によって収集されたデータの活用は、大きなビジネスチャンスを生む。既に急加速、急ブレーキの回数や走行距離のデータを保険会社に提供し、走行実績に応じて保険料が変わるシステムなどが、実用化されつつある。

 「つながる」機能は、開発競争が加速する自動運転にも欠かせない技術だ。車同士のデータが共有されることで、位置情報から見通しの悪い交差点での危険を避けたり、ブレーキ情報から数キロ先の事故を予測したりできる。「いつまでも『三河の鍛冶屋』でいいわけがない。車は新しいサービスを提供する情報通信端末になる」と、トヨタの専務役員、友山茂樹(58)は言い切る。

 つながる車で先行するのがIT業界出身のイーロン・マスク(45)が創業した米電気自動車(EV)ベンチャーのテスラだ。

 テスラ車内で、ひときわ目を引くA4判大のモニター。タッチ操作でき、巨大なスマホ画面がはめ込まれたような印象だ。エアコンやナビだけでなく、サスペンションの高さ調整まで、画面で操作でき、使い勝手もスマホそっくり。ナビの地図はネット更新で、常に最新の状態にある。

 走行制御などをつかさどる車の頭脳「電子制御ユニット」のソフトウエアの更新が準備できると、画面に小さな黄色のマークが現れる。運転者はタッチ画面を操作し、ネット通信でソフトを更新できる。購入後、自動駐車機能などが追加され性能が向上する愛車に、ジェー・ネルトン(59)=熊本市=は「更新するたびに便利になる。クルマの未来だ」と笑顔を見せる。

 ただ、つながる車は外部から乗っ取られれば、命の危険を招きかねない。昨年九月、中国のセキュリティー研究チームがテスラ車のハッキング(乗っ取り)に成功したと公表し、話題になった。このチームに悪意はなく、テスラもすぐにソフト更新で対応したが、つながるリスクは常に潜む。

 トヨタ幹部は言う。「車両の安全に関わる部分について自動更新してもいいのか、よほど慎重に考えないといけない」(敬称略)

 

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