トップ > 特集・連載 > クルマ革命 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

クルマ革命

<第1部>自動運転の衝撃(1) 開発スピード段違い

自動車ショーさながらの家電見本市「CES」=1月6日、米ラスベガスで(岸本拓也撮影)

写真

 昨年より二割増となった展示スペースには、自動運転機能などを搭載した最先端の実車がずらりと並ぶ。カナダの携帯電話メーカー「ブラックベリー」や、中国のネット検索大手「百度(バイドゥ)」は、自動運転に活用可能な自社技術の宣伝に躍起だった。

 米ラスベガスで一月に開かれた世界最大の家電見本市「CES」。自動運転や人工知能(AI)、それらの開発に不可欠なセンサーや画像認識など、クルマに関連する出展企業は過去最多の百三十八社に上った。「今や、自動車ショーですね」。今年初めて参加した日産自動車の社長、カルロス・ゴーン(62)は基調講演で会場の笑いを誘った。

 かつてテレビやスマホだったCESの主役は今、クルマに変わった。十年ぶりに参加したホンダは、ソフトバンクグループと共同開発した自動運転の試作車を発表。「幅広い技術に一社で対応するのは不可能。あらゆる企業と戦略的な連携を図る」。商談の輪が広がる会場の一角で、本田技術研究所社長の松本宜之(よしゆき)(59)は話した。巨額の開発費を削減できる利点もある。

 自動運転、ITでつながるクルマ、ライドシェア(相乗り)…。自動車業界はIT企業参入でクルマづくりの環境が一変した。生き残りのため各メーカーは「自前主義」を捨て、異業種連携を加速する。トヨタ自動車は米マイクロソフトや米ウーバー、日産は米航空宇宙局(NASA)と提携。ホンダも自動運転開発で米グーグル傘下の「ウェイモ」と提携協議を始めた。

 だが、ウェイモとの交渉を担う松本は「相当なスピードが求められる。今までの自動車産業とは別次元」と、開発にかける時間軸の違いを痛感する。

 これまでの自動車業界は技術をこつこつ積み重ね、改良を加えていく「擦り合わせ型」。トヨタは水素と酸素から起こす電気で走り、水しか排出しない画期的な燃料電池車「ミライ」の開発に二十二年かけた。だがIT業界は、例えば一年半の間に同じコストで情報処理能力が二倍に進化する世界。自動運転の開発でも運転支援のレベルから段階的に進もうとする自動車メーカーに対し、IT勢は一足飛びに完全な自動運転を目指すイメージだ。

 AI開発を進めるトヨタの坂井克弘(43)も、スピード感の違いに戸惑った一人だ。昨年六月から自動車産業発祥の地・米ミシガン州の「トヨタ・リサーチ・インスティテュート」でIT転職組と机を並べる。会議時間はトヨタ時代の三分の一。会議資料もパソコン上で仲間と意見交換しながら作る。「とにかく時間を効率的に使う。フットワークも軽い」

 完全な自動運転による究極の「ぶつからないクルマ」が実現すれば、車体の強度や安全装置をはじめ自動車メーカーが培ってきた技術の蓄積は、不要になりかねない。グーグルが実用化のめどとする二〇二〇年まで三年を切った。日産のゴーンは今後十年の自動車産業を、こう予測する。「過去半世紀で起きた以上に変化する」(敬称略)

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

Search | 検索