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高校生・大学生

<スタッフが聞く> 歌舞伎役者・坂東彦三郎さん、亀蔵さん

高校生記者の質問に答える(右から)坂東彦三郎さん、坂東亀蔵さん=中日新聞社で

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 江戸時代に花開き、四百年以上続く歌舞伎。興味はあるけれど、「日本の伝統芸能」と言われると身構えてしまう−。そんな高校生スタッフが、歌舞伎役者として活躍する兄弟に魅力を聞いた。

 歌舞伎役者の家に生まれた坂東彦三郎、亀蔵兄弟。幼稚園に通うころ、すでに歌舞伎役者として舞台に立っていた。学校生活と仕事をどのように両立させたのだろうか。「働く幼稚園児だった。舞台があって早退する時は、友達が玄関でお見送りしてくれた。周りも自分もそれが特別だと思っていなかった」と振り返る。

 歌舞伎は毎月公演がある。一カ月に二十五日間の興行があり、残りの五日間は次の月の練習に充てる。中学時代は、舞台に出るのは一年に一公演ほどだったが、日本舞踊や長唄、三味線、鳴り物などの稽古ざんまいの日々。そんな中でも「部活もやっていたし、合宿にも行った。あのころは一日三十時間くらいあったのかな」と笑う。

 一人のスタッフが「稽古が嫌になることはなかったのですか」と尋ねると「稽古は嫌でしたね。みんなが塾に行くのがそんなに好きじゃないのと一緒かな。でも行かないと親にも先生にも怒られるし、自分のためにもならないから」と亀蔵さん。「ある時、ころっと楽しくなる。できないことができるようになってくると楽しい」と続けた。

 現在、三百人ほどの歌舞伎役者がいる。うち、血筋があるのは百人ほど。「歌舞伎役者の家に生まれた」という重圧はなかったのだろうか。「周りの大人たちがかわいがってくれたので、楽屋に行くのは楽しかった。皆さん同じような経験をして歌舞伎役者になったから、家族みたいなもの」。彦三郎さんの長男・亀三郎君も昨年、四歳で初舞台を踏んだ。

 歌舞伎は、その文字が示す通り音楽と舞踊と芝居からなる総合芸術。「楽しみ方は人それぞれ。好きな役者を見つけてきゃーきゃーいうのも正解だし、衣装やかつらがきれいだなという見方もできるだろうし。大道具の背景は手描きで、小道具もほぼ手づくり。ストーリーじゃない部分を見るのもすごく面白いと思う」

「女暫」の舞台で猪俣平六役の坂東亀三郎(現・彦三郎)さん(右)と江田源三役の亀寿(現・亀蔵)さん=2016年、東京都中央区の歌舞伎座で

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 音楽一つとっても、長唄や義太夫など種類があり、重要な役割を担う。例えば、太鼓の鳴り方で雨や雪、風などの自然現象を表す。「その音が何を意味しているかが分かってくると、さらにお芝居に入り込める」と、少し上級者向けの楽しみ方を教えてくれた。

 そんな生粋の歌舞伎役者の二人に伝統を見つめ直させたのが、留学経験だった。彦三郎さんは「『おまえの国の文化は何だ』と聞かれて考えた時、歴史があるものが文化なんだと。四百年続く歌舞伎は海外の文化に対抗できる」と力を込める。亀蔵さんは日本舞踊を踊る機会があった。「歌舞伎を見たことがある人がいなくて、人が集まるか半信半疑でした」。始まってみると観客は大勢で、終わった瞬間に大歓声が上がった。中には「うちの高校でも踊ってほしい」とリクエストする高校教師も。「言葉は通じなくても、表現だけで心を動かす歌舞伎は素晴らしいと確認できました」

 江戸時代に大衆芸能として栄え、今なお人々を魅了する日本固有の演劇。高校生たちにも舞台に足を運んでほしいと願う。「娯楽だけど勉強になるし、世界に通用する。ライブで見ると感覚が変わる。肌で感じて」

 (構成・大沢悠)

◆スタッフ感想

 佐藤 天音(高2・愛知県扶桑町) 「怒られるということは期待されているということ」。稽古について質問をした時、返ってきた言葉が印象に残った。小さな頃から病気やけがをしても舞台に立っていたという。プロとして活躍する人たちの強い信念を垣間見た。

 池内 友音(高3・愛知県半田市) 2人は「お客さんとの出会いは一期一会」「楽しみ方は人それぞれ」と話していた。私は将来、音楽の先生になりたいと思っているので、歌舞伎の舞台を生で見てもらい肌で感じる機会を少しでも多くの生徒に届けたいと思った。

 市川 慎太郎(高2・愛知県豊橋市) 海外へ行った時には、日本の文化や自分の国の誇れるものを説明できるようにしなくてはいけないと思った。歌舞伎は、昔からの伝統を守りつつ、新しい演目をつくるなど進化をしながら受け継がれていると学んだ。

 奥野 郁子(高3・愛知県長久手市) 取材をして、三味線など少し前までは日常にあったものが失われつつあるということを意識した。日本の伝統文化を残していくには、自分たち若い世代がもっと日本文化を身近に感じ、興味を持つ必要があると思った。

 <ばんどう・ひこさぶろう> 1976年生まれ。

 <ばんどう・かめぞう> 78年生まれ。

 2017年5月、九代目坂東彦三郎、三代目坂東亀蔵をそれぞれ襲名した。祖父は十七代目市村羽左衛門、父は初代坂東楽善。10月に御園座(名古屋市中区)で開かれる「第四十九回吉例顔見世」で「義経千本桜」と「女暫」に出演する。

 

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