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高校生・大学生

<スタッフが聞く> ジャーナリスト・池上彰さん

池上彰さん(中)を取材する高校生スタッフ=東京都千代田区で

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 十八歳から選挙権が得られるというのに、社会のことに無関心ってちょっとヤバい!? そんな危機感を抱く高校生スタッフたちが、分かりやすいニュース解説でおなじみのジャーナリスト池上彰さん(68)を直撃。世の中に疑問を持つには、どうしたらいいですか−。

 高校生スタッフの一人が「世の中への疑問は何かと聞かれても『特にないなー』と思ってしまいます」と打ち明けると、池上さんは「確かに疑問を持ちなさいと言われても困りますね。でも日ごろ『嫌だなあ』とか『ムカつく』と思うことはあるでしょう。それってしゃれた言い方をすると『疑問』なんです」と説明してくれた。

 身近な疑問を出発点にニュースに目を向けると、当たり前だと思っていたことが案外とそうでもなかったり、意外にも政治経済の最前線につながっていたりすることに気づく。例えば、高校生にとって身近な大学入試。「塾に通っている中で『何でこんな勉強をしなくちゃいけないの』って思わない?」と池上さん。うなずくスタッフに「新聞の国際面を開くと、こんな記事が載っているんです」。解説してくれたのは、フランス政府が打ち出した大学改革に対して、学生たちが抗議活動を繰り広げたという今春のニュースだ。

 実はフランスには日本のような大学入試がなく、バカロレアという高校卒業資格を取れば、自分が学びたい大学に進学できる。一方で名門大は学生であふれ、勉強についていけずに脱落する人も多いという。そこで大学に入学できる人を能力に応じて選抜しようというわけだが、「フランスは自由と平等の国。誰でも大学に入れるべきだと学生たちが怒っているのです」。

 とはいえ日本では、こうした社会の出来事について学校で熱っぽく語ってしまえば、周りから「意識高い系」と敬遠されがちに。スタッフの一人が「僕、浮いちゃうんですよね」と漏らすと、池上さんは「こんなに世の中に関心を持たない高校生がいる国って実は珍しい」ときっぱり。「君は今、高校では少数派かもしれないが、世界にしたら周りの人の方が少数派。自信を持って!」と励ました。

 戦後間もない小中学校時代は「世の中なぜこんなことになっているんだろうと、疑問にあふれていた」と池上さん。当時住んでいた東京都内にはまだあちこちに貧しい人たちが暮らすスラム街があったといい「家に食べ物がなく、学校で空腹のあまり嘔吐(おうと)してしまう子がいたし、自分より成績のいい友人が高校に進学できず中卒で働いていた」。

 今では高校に当たり前のように進学し、高校生の半数以上が大学や短大で学ぶ時代になった。「世の中のことを気にしなくても暮らしていけるのは、ある意味では幸せなことかもしれません」

 ただ日々のニュースに関心を持たなければ、知らないうちに国会などで物事が決まり、子育てや介護の当事者になって初めて「えーっ、そんなことになってたの」となる可能性がある。海外では年金の支給開始年齢の引き上げに対し、「高校生たちがデモ行進で声を上げているんですよ」。

 一人一人の身近な疑問が集まり、やがては社会を変える原動力となる。池上さんは「自分たちの暮らしを見つめ、少しずつでもニュースに目を向けてほしい。おかしいことをおかしいと思える力を持つことが大切です」とメッセージをくれた。

 (構成・川合道子)

 <いけがみ・あきら> ジャーナリスト、名城大教授。慶応大経済学部を卒業後にNHKに入局し、報道記者やキャスターなどを務めた。2005年に独立。本紙の毎月第4日曜朝刊「マナビバ高校」面で高校生たちの素朴な疑問に答える「ニュース池上塾」を連載中。1950年、長野県生まれ。

◆スタッフ感想

 飯沼 菜緒(高3・名古屋市名東区) 池上さんに一つ質問すると、答えの中にいくつものニュースが出てきた。自分には関係ないように思っていた政治のことが身近な生活につながっていると気付き「明日の新聞を読みたい。知りたい!」と思った。

 大津 桃花(高3・愛知県稲沢市) 池上さんは、今話していることさえも常に「疑ってかかれ」と言った。人は誰でも間違う。だからこそ、何にでも疑う姿勢が必要なのだと。おかしいことをおかしいと思うことが、社会を変えるきっかけになるのだと思った。

 畑山 亘(高3・名古屋市緑区) 取材で疑問を持つことの大切さを知った。今の社会の流れを見て「おかしい」と思うか、それとも「知らない」で終わるのか−。私たちがどう考えるかが、日本の将来を決めることにつながるのだとあらためて感じた。

 岡庭 幸紀(高2・長野県阿智村) 池上さんは、世の中に疑問を持たなければと意識するのではなく、自分の身の回りにあるささいなことに興味を持つことが大切だと話した。まずは周りの人たちと疑問を共有し、一緒に考えることから始めたい。

 

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