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高校生・大学生

広がる給付型奨学金 返済必要なし「勉強に集中できる」

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 今や学生の半数が利用している奨学金。日本では「貸与型」が一般的だが、返済が長引くことへの不安から、返す必要がない「給付型」に関心が高まっている。対象となる人は限定的だが、国だけでなく地方自治体や民間企業などによる設置が広がっている。

 この春、志望校だった公立大での大学生活をスタートさせた愛知県南知多町出身の女子学生(一年)は、「教育や福祉の専門知識を身につけ、将来は保育士として地元に貢献したい」と声を弾ませた。

 夢を後押ししているのが民間の「月額十万円」の給付型奨学金だ。両親は共働きだが、自営業やパートで収入は不安定。四人姉妹で、学費の援助や仕送りは望めなかった。進路に悩んでいた高三の夏、担任から給付型の存在を聞いた。「返すのが当然だと思っていた。返さなくてもいい奨学金があるとは驚きでした」

 それまで考えていたのは学生の多くが利用する日本学生支援機構(JASSO)の貸与型。「返済が結婚後や子育て中まで続くことに不安を感じていた」。借りる額を抑え、不足分は「毎日詰め詰めでバイトして稼ぐ」つもりだった。

 現在もらっている十万円は下宿先の家賃や食費、学費の積み立てに充て、交際費などは週二〜三日程度のアルバイト代でまかなう。「時間に余裕があるので勉強に集中でき、保育以外の分野にも興味が広がった」と女子学生。最近は障害がある人の生活を支援するための研修を受けたり、自閉症などの子どもたちと交流するボランティアサークルに所属したりして、活動の幅を広げる。「奨学金が、『しっかり学んで社会に貢献できる人にならなきゃ』という良い意味でのプレッシャーになっています」

 この女子学生を支援しているのが名古屋市瑞穂区の「服部国際奨学財団」だ。二〇一四年から大学進学を目指す東海三県の国公立高生を対象に公募を開始。本年度は大学生約百四十人に一人あたり年間百二十万円の奨学金を給付している。

 財団は中古車オークションを手掛ける会社の創業者が人材育成を目的に設立した。原資は創業者が保有していた自社株の配当金。毎年約三億円を学生の奨学金や財団の運営に充てている。

 昨年にJASSOが国の税金を財源に新設した給付型は生活保護受給世帯などを対象にしているが、財団は家計基準をそれよりも緩い貸与型の第一種と同程度に設定している。例えば四人世帯なら、給与所得が七百四十七万円以下程度で応募資格がある。

 六月下旬に開いた説明会では定員六十人の会場が高校生や保護者らで埋まり、急きょ八月二十八日にも追加開催を決めた。担当者は「予想以上の反響で給付型への関心の高さを感じる。貧困層だけでなく、奨学金を本当に必要としている学生に届けられるよう今後も周知したい」と話した。

◆貸与型“バイト漬け”の学生も

 JASSOの調査では、一六年度、国以外が設けた奨学金制度を利用した学生数は五十五万四千六百七十五人で過去最高となった。

 ただし、中京大国際教養学部の大内裕和教授(教育社会学)によると「貸与型は、卒業後の返済を心配し、借りる額を抑制したり、利用をやめたりする学生が目立つ」と言う。別の調査では、大学生(昼間部)の収入のうち、家庭からの仕送りや奨学金が占める割合は二年前より減少し、アルバイトの割合が増えている=図。「大学生活を続けるためにバイト漬けになり、学業がおろそかになる学生も多い」と指摘する。

 最近では大学卒業後に地元へ戻る代わりに奨学金を給付したり、社員が借りた奨学金を肩代わりしたりと、独自の制度を導入する自治体や企業などが増えている。大内教授は歓迎しつつも「給付の条件によっては、将来の選択肢を狭めてしまう可能性もあると考え、奨学金を選ぶことが大切だ」とアドバイスしている。

 (川合道子)

 

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