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高校生・大学生

<スタッフが聞く> ゲーム依存専門外来精神科医・曽良一郎さん

神戸大の曽良一郎教授(左から2人目)から話を聞く高校生スタッフ=神戸市中央区の神戸大で

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 オンラインゲームなどのやりすぎで日常生活に支障をきたす「ゲーム依存」が社会問題になっている。高校生スタッフの周りでは「数万円をつぎ込み、勉強に手が付かない」という例も。依存しないためにはどうしたら? 神戸大病院(神戸市)で専門外来を開設する精神科医の曽良一郎教授に聞いた。

 いつでもどこでも楽しめるスマートフォンなどのオンラインゲーム。現実にはないスリルや仲間との一体感などを味わえるとあって若者に人気だが、こうしたゲームにのめり込み、社会生活が困難になるケースが世界中で相次いでいる。

 曽良教授の元には睡眠不足で学業がおろそかになったり、感情がコントロールできなくなったりして家族と相談に訪れる中高生が増えているという。「ゲーム依存はアルコールや薬物の場合と同じく、脳の『報酬回路』が異常をきたすことで起こると考えられる病気です」。脳内では一体何が起こっているのだろう。

 そもそも私たちが食べたり眠ったり、好きな人と過ごしたりするのは、その行為によって快感や喜びといった「報酬」が得られるためだ。脳内でドーパミンという物質が分泌され、こうした感情をつかさどる部位が刺激される。報酬がなければ、私たちは食べることも子孫を残すこともしない。つまり報酬回路は、「動物が生存していくのに必要なシステム」なのだ。

 ところが薬物などを使って通常を上回るドーパミンが繰り返し放出されると、脳は過剰な刺激に反応して、それまでの報酬では満足できない回路に変わってしまう。「快感の経験が何度も強く刷り込まれた脳を元に戻すのは困難」と曽良教授。やめたくてもやめられない状態になり、次第に暴力行為や借金をしてでも欲求を満たそうと感情の抑制がきかなくなる。

 リアルタイムで他のプレーヤーと競ったり協力したりできるオンラインゲームは「飽きさせない工夫が満載で面白い半面、『報酬』を得られやすいため依存性が高い」と指摘する。

 例に挙げたのは、多人数が参加して、敵を倒すなどして成長していくタイプのロールプレーイングゲーム「MMORPG」や、ゲームを優位に進めるのに必要なアイテムを入手するための「ガチャ」という課金システムだ。「ゲームは学校生活などに比べて簡単に達成感を得やすい。強くなるとゲーム仲間から一目置かれるため、親のお金を盗んででも課金して、欲しいものを手に入れようとする例が少なからずある」と説明した。

      ◇

 依存しないためにはどうしたら−。曽良教授は「そもそもなぜゲームを使ってしまうかを考えることが大切」と話した。依存する背景の多くに「現実逃避」や「自己肯定感の低さ」があるためだ。特に十代は友人関係がうまくいかなかったり、親の期待に応えようと勉強を頑張っても実力が及ばなかったりして、現実を受け入れたくないという思いから、ゲームに没頭し始めることがあるという。

 ついついスマホを手に取る“予備軍”のスタッフたちに、大切なのは「リア充(リアルな生活を充実させること)だ」と曽良教授。「ゲームにのめり込み、日常生活に使える力が少なくなっているなと感じたらイエローカード。スマホとの距離を置き、周りの友達と現実の世界での楽しみを共有するなどリア充してほしい」とアドバイスした。

 (構成・川合道子)

 <そら・いちろう> 神戸大大学院医学研究科教授。岡山大大学院を修了し、精神科医として勤務後、アメリカ国立衛生研究所で薬物依存などを研究。2013年から現職。1957年、徳島県生まれ。好きなゲーム「ドラゴンクエスト」はファミコン版の発売当初から親しむ。

◆スタッフ感想

 久保 友悟(高2・名古屋市天白区) ゲーム開発に興味がある私にとって複雑な心境だった。ユーザーがゲーム依存にならない対策をするほど、つまらないゲームになりかねないからだ。どのようにバランスをとるべきか難しい時代だと感じた。

 鶴見 清太朗(高2・愛知県岩倉市) 依存について研究している曽良教授自身も「実はゲームが好き」だそうだ。そのような方に「リア充を楽しめ」と言われ、心に染みた。私たちも節度を持ち、リアルを楽しみながらゲームと向き合いたい。

 坂部 有里(高1・三重県川越町) ゲームは私たち中高生に身近な存在で、とても面白いものだ。しかし同時に高い依存性をはらんでいるものもある。その危険を知った上で、うまくゲームと付き合う方法を考えていくことが大切だと思った。

 横地 君咲(高1・名古屋市中村区) 曽良教授は依存患者を診察する際、ゲームをすることを否定するのではなく、なぜ依存するかの背景を探りながら、患者との信頼関係を築くことが大切だとおっしゃった。私もそんな思いやりのある医師になりたい。

 

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